例会・観察調査会の報告
2023年12月18日（日） 文京シビックセンター
【館山湾の打上げ貝】 谷口智彦氏
打上げ採集は環境にローインパクトな優れた採集方法であることを説明。館山湾内において、その打上げ採集で得られた貝について多数の写真で解説。主として普通種を中心に紹介されたが、参加者は東京近隣である館山湾の打上げでも非常に多くの種を採集出来る事、南方種の北上が進んでいることを実感した。 パワーポイント映写。
【九州北部の旅と貝】 石井健一郎氏
演者は九州貝類談話会総会に出席する為、福岡を訪れる機会があったが、事前に前乗りをし、福間海岸〜津屋崎での採集を試みた。打上げ採集にはやや季節的に早く、ほとんど収穫は無かったが、本来同地で得られる貝を微小貝中心に紹介。また関連してタンセイイトカケシタダミの生息深度、各地で採集される未詳のシタダミ類についても言及した。その他、九州貝類談話会の総会の様子などについても報告した。 パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2023年10月15日（日） 文京シビックセンター
【ミジンツツガイ類の多様性 ‐どのような環境に、何種類いるのか？‐】 穴井陸大氏
ミジンツツガイ類は、日本を含む世界の沿岸に生息する筒状の殻を持つ微小な腹足類の一群である。本発表では、ミジンギリギリツツ科Caesidaeの分類学的位置付けや生息環境、採集方法をスライドや標本の回覧を通して紹介した。今日まで分子系統解析を用いた研究から見放されてきたミジンツツガイ類は、日本近海においても高い種多様性を持つことが判明しつつあり、演者の見積もりでは少なくとも20種以上が生息していることが示された。 標本回覧・配布、パワーポイント映写。
【水域に生息する貝類の保全に向けて：イシガイ科の分類の最近の動向と地方版レッドデータブックの事例から日本産カワニナ属の分類史と多様性】 古瀬尾友樹氏（香川西部支援学校）
貝類を保全するには保全対象の明確化と、生息状況を調査する必要がある。イシガイ類は殻形態が変化に富み、隠蔽種が存在する可能性が高く、最新の分類を知ることが重要となる。2000年代以降、分子系統学的研究の進展などにより、日本産イシガイ科の分類は大幅に改訂されている。国内に分布する種はKondo(2008)の7属15種から13属31種へと大きく増加した(2022年現在)。これらの改訂を踏まえ属ごとに各種の特徴を説明。また、イシガイ類の生息環境が悪化しており、分類の大幅改訂により保全対象種が増加してきていることにも言及した。 レジメ配布、パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2023年8月27日（日） 文京シビックセンター
【貝の標本学：個人コレクションの価値を高めるために】 佐々木猛智氏
我が国ではこれまで膨大な数の貝類標本が作られ、その作成には多大な労力や費用が費やされてきた。しかし、その多くが所在不明となっている。そのような損失を繰り返さない為には標本管理の徹底が必要である。各標本のデータラベル（採集地、採集日、採集者等）の添付は勿論、第三者に標本を譲渡する場合、電子化され整理されていればコレクションの価値は大きく高まる。日本の博物館は既に縮小の過程に入っており、整理の悪いコレクションは歓迎されなくなりつつある。貴重な標本が廃棄されず大切に保管される為には、標本作成者の心掛けが大きな要素となる。 パワーポイント映写。
【アラレタマキビの海水を避ける行動の個体差について】 濱田昌宏氏
神奈川県三浦においてアラレタマキビの観察、実験を通し、アラレタマキビの海水を避ける行動の個体差を生む要因について考察した。結果、幼貝・老成貝に該当する殻長の個体は成貝に該当する殻長の個体に比べ強く海水を避ける傾向、飛沫帯での分布傾向と殻長の差の関係が示された。また、産卵期後数ヶ月間はこの個体差は存在するものの、それ以降個体差は弱くなっていった。これにより、成貝が産卵時に自ら入水して産卵を行うことが産卵期後に海水を避ける行動の個体差を生じさせている可能性が示された。今後は雌雄での差や1個体の行動の強弱の変化についても考慮し考察を続けていく。
パワーポイント映写。
【日本貝類学会令和５年度大会（95周年記念大会）報告】 大会出席会員
【バザー】 標本多数の提供があった。
2023年6月18日（日） 文京区民センター
【人間ドレッジ ー館山湾でこんなものが採れたー】 都築章二氏
千葉県館山市富士見、海上自衛隊航空基地北側、沖ノ島〜鷹の島間で泳ぎながら砂を採取し、得た砂から抽出した貝、また付近の岩場や転石裏より採集した貝について解説した。ドレッジに使用した調理用ザルやシュノーケリング機材、現場環境について説明。また他産地で採集したサンプルとも比較解説した。 パワーポイント映写。
【神奈川の海の昔と今】 池田等氏
神奈川の海、相模湾は海洋生物の発祥地として知られ、豊富な生物相を示している。海辺に住む演者は60年余り相模湾の海況を観ながら海洋生物相に注目してきた。その間、沿岸開発による環境変化や漁労文化の変遷を肌で感じ、貝類をはじめ多くの海洋生物が激減、消滅あるいは繁殖に至る状態を見てきた。いっぽうで消滅するも復活したものもあり、近年の海水温上昇、黒潮大蛇行でタルダカラ、ベニヤカタなどのニューフェイスも出現している。特にここ6ー7年の海水温上昇、黒潮大蛇行による磯焼けが騒がれる中、異変ともいえる海況は人生で初めての経験である。こうした様相を含む「神奈川の海の昔と今」を報告した。 パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2023年4月16 日（日） 文京シビックセンター
【ドレッジで得た館山湾の貝類】 櫻井昇氏
千葉県館山市の漁港で偶然地元漁師と会話する機会があり、ドレッジを行うきっかけとなった。自ら製作したドレッジを使用し、塩見〜波佐間沖の上部浅海帯で2018年4月〜11月の間に5回実施した。投入した回数は計50回ほどである。タケノコガイ科貝類、タカラナワメグルマ、マボロシガイ等の打ち上げでは得難い良質の標本も得られ、採集方法としてのドレッジの長所を示すことが出来た。ドレッジを行う機会を与えてくれた地元漁師に感謝したい。 パワーポイント映写。
【北米カリフォルニア州南部の潮間帯貝類】 古村俊行氏
アメリカ合衆国・ロサンゼルス近郊のアーバインに滞在する機会があり、近辺にて貝の調査を試みた。岩礁ではナスビガサ、カリフォルニアイガイが多産し、加えてナミジワターバンやクジャクアワビなど西海岸の有名種も確認できた。別荘地のある砂浜ではムシロガイ類、シモフリナツメ等を確認。また河口干潟は生物保護区のため詳細な調査は出来ないが、ウミニナ類、アゲマキ類などが棲息しているようだ。市街地のヤブの中にはスペインサラセンマイマイが鈴なりになって棲息していた。東太平洋障害の影響か、日本との共通種は見られなかった。 標本回覧、パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2023年2月19 日（日） 文京シビックセンター
【総会】
※42名参加の盛会となった。
１．令和4年度 会計報告 監査報告（出席者により承認された）
２．令和5年度 活動計画
（1）運営体制
会長：雑賀俊之 副会長：鈴木孝政、石川謙二、石井健一郎
名誉顧問：奥谷喬司先生
会誌編集・名簿・発送：石井健一郎 会計：中村義男
庶務・連絡：竹中伸也 HP：増子博英 監事：清水利厚
（2）例会 年間6回の開催
開催日は原則、偶数月の第3日曜日（8月は第4日曜日）
日程：2月19日、4月16日、6月18日、8月27日、10月15日、12月17日
観察調査会 海、陸、化石
（3）会誌発行予定 137号7月（原稿締切6月末）、138号来年1月（原稿締切12月末）
3．令和5年度 予算案（出席者により承認された）
【新春ご講演 深海の貝類のお話】 奥谷喬司先生
深海の定義と深海底の環境、内外の調査船の歴史とそれらによって得られた実績、また、JAMSTECによる近年の調査船、採集方法などについてご解説があった。また、深海の貝類の特殊な生態についてもご説明。体内に硫黄細菌を共生させ、細菌が生産した栄養を取り込む化学合成生態系を持つ貝がいる。それらには海底から湧き出るメタンや硫化水素を使うシロウリガイ類やナラクハナシガイ、熱水噴出孔域に棲むアルビンガイやヘイトウシンカイヒバリ、鯨骨に群がるゲイコツマユイガイなどがある。豊富な写真と普段見ることが出来ない貴重な標本の回覧とともにご解説頂き、大変勉強になった。
パワーポイント映写、標本回覧。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2022年12月18 日（日） 文京区民センター
【日本の水産試験所の役割】 清水利厚氏
各都道府県の水産試験場、国立水産研究機関の紹介、また千葉県水産総合研究センターの沿革、研究推進方針について説明、水産試験場の役割は、水産業が抱える課題を解決するため、水産分野における研究開発を推進し、その成果を社会へ還元、水産業を活性化させることにある。水産業は突き詰めれば「とる（漁業）」「増やす（増殖）」「加工する（製造）」に治斂され、それを活性化させるために行ってきた事業について具体的事例をもって解説。また千葉県のアワビの栽培漁業について、種苗生産から輸採型漁場漁獲まで、貴重な動画で紹介した。
レジメ、アワビ稚貝の標本配布、パワーポイント、動画映写。
【イモガイの最新分類について】 山田彩斗氏
従来のイモガイの分類では、既存の属または亜属に形態的に似ているものを纏めていることが殆どだったが、近年は網羅的な分子系統解析も行われ始めている。殆どの種はConus、ヒシイモ属Conasprella、ヨモスガライモ属Profundiconusの３つの広義の属に分かれ、うちConus属に未だ8割近くが含まれる。これらの区分には形態的分類はあまり適用できず、例えばチュウカイモ、アコメガイ、テラマチイモはそれぞれ別属となる。この他、ヤタテイモ、オマーンイモ、マシライモ、カシュウイモをそれぞれ含む4属が設定される。Conus、Conasprellaの下には計数十〜百ほどの亜属が置かれているが、これらを属の階級として扱う意見もあり、その場合は現在の属に当たる上位分類群の設定が望まれるだろう。また分岐順はまだ確定的でなく、未解析の種や亜属も多い。 パワーポイント・ワード映写、標本回覧、PDFファイル配布。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2022年10月16 日（日） 文京シビックセンター
【海砂に含まれる生物遺骸のあれこれ -ファーブルフォトによるデジタル撮影-】 竹中伸也氏
海砂には、岩石片や鉱物とともに多くの生物遺骸が含まれている。これらをNikon製実体顕微鏡「ファーブルフォト」で観察・撮影した顕微鏡写真を紹介。海砂を採取した場所は、南紀田辺の扇ヶ浜と天神崎、神奈川県の逗子海岸と一色海岸、沖縄県の渡口の浜、奄美大島の土浜海岸等。10箇所。生物遺骸としては、微小貝、コケムシの殻、有孔虫の殻、ウニの殻と棘、サンゴ・ヤギ類の骨格、カイメンの骨格、乾燥したウミホタル、多毛類の棲管、サンゴ藻等、多様な色や形態のものであった。
レジメ配布、パワーポイント映写。
【日本産カワニナ属の分類史と多様性】 澤田直人氏
主に琵琶湖産のカワニナ属を中心に解説。琵琶湖で種分化したカワニナ属は種間の形態が酷似し、その同定は困難を極める。しかし成貝と胎殻の形状や表面彫刻を数値化することで、形態からの判別が可能である。また近年では遺伝情報を用いて分子系統関係も明らかになってきている。それにより新種の発見、既知種のシノニム化が行われ、分類の整理が進んでいる。各種の形態的特徴、琵琶湖における分布状況、各地への移出状況についても言及した。 レジメ配布、パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2022年8月28 日（日） 文京シビックセンター
【北海道アンモナイト化石の世界】 古村俊行氏
多種多様な形態を持つアンモナイトは研究対象としてはもちろん、収集対象としてもたいへん興味深い。中でも北海道産のアンモナイト化石は、世界的に見ても極めて保存が良いもので、毎年多くの研究者や
アマチュアがフィールドに足を運んでいる。北海道産のアンモナイトはなぜ保存が良いのか、また現地でどのようにアンモナイトが産出するのかについて、実際のフィールド写真を交えながら解説した。
標本回覧、パワーポイント映写。
【石垣島の軽石の漂着】 細谷鈴子氏
2022年1月4日〜8日までの5日間、沖縄県石垣島へ旅行する機会を得た。周辺の離島である西表島、由布島、竹富島へも足を延ばした。石垣島では島内のドライブ、鍾乳洞、玉取崎展望台、川平湾グラスボート等のレジャーを満喫しながらも、旅の合間には貝類の採集を試みた。また、昨年の小笠原海底火山の影響で各海岸には大量の軽石がプカプカ浮かんでいた。講演当日、西表島と石垣島で採取した軽石を回覧した。例会参加の会員から軽石にウキツボが付いているとの指摘を受け、貝類生態の多様さを実感した。 標本回覧、パワーポイント映写。
【各地同好会との交流 ー 対馬での観察会参加報告】 雑賀俊之氏
東京貝類同好会の会誌交換先である南紀生物同好会、阪神貝類談話会、九州貝類談話会、名古屋貝類談話会のそれぞれの会誌を回覧し、各会の概要や活動内容を紹介した。6月に個人会員として参加した九州貝類談話会の対馬大会で観察した対馬固有の陸貝や、ツシマヤマネコの生態など国境の島の現況を報告した。 資料配布、パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2022年６月19 日（日） 文京シビックセンター
【恐竜時代の二枚貝トリゴニオイデスは海から来たのか、陸から来たのか？】 吉村太郎氏
ジュラ紀中期に出現した二枚貝トリゴニオイデス（古異歯亜綱）は、海生サンカクガイ目と淡水生イシガイ目の特徴を兼備する絶滅分類群であり、その分類学的位置が長年議論されてきた。本研究では、古異歯亜綱の現生全7科（サンカクガイ科・イシガイ科・カワシンジュガイ科・Etheriidae ・Hyriidae ・Iridinidae ・Mycetopodidae）25種とトリゴニオイデスやプテロトリゴニアを含む化石12種について、電子顕微鏡を用いて貝殻に含まれる有機質の微細構造を観察した。この結果、トリゴニオイデスの殻皮にイシガイ目の共有派生形質である立体的なハニカム構造が認められたことから、同分類群はイシガイ類に起源すると結論付ける。この有機質化石のイメージングは、ナノスケールの新規分類形質を提供し、二枚貝における淡水進出史の解明に光を当てるものである。 標本回覧、レジメ配布、パワーポイント映写。
【2021秋、泳ぎながらザル掬い】 都築章二氏
昨年10月15 〜 28日の間、沖縄本島那覇市と本部町に滞在し、各地（豊見城市、名護市、宜野座村、恩納村、南城市）でシュノーケリングをしながら調理用ザルを使用し貝類を採集した。採集にあたっての移動手段、装備と風向、駐車スペース等場所選びの条件等を説明。産地ごとに採集種の画像を映写し他産地産と比較、それぞれの種の特徴を解説した。 パワーポイント映写。
【貝の学名について】 知野光雄氏
貝の学名について命名者の感性、連想、閃き、こじつけ等をみると興味深い。動物分類命名規約の適用範囲、便宜上使われるvar.forma、シノニムとホモニム、属位変更による消滅等。人名、地名、形状、彫刻、模様、日本語の使用、動物名とタカラガイ、職業とイモガイ、身体部分、天文、神話、生息域等の諸要素、ハワイ語、ズールー語等、簡明・混迷の事例紹介。 レジメ配布、パワーポイント。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2022年４月17 日（日） 文京シビックセンター
【上海（シャンハイ）シェルショー】 永田幹治氏
2018年7月末、勤務する会社の一斉休暇と上海シェルショーの日程が一致したため、開催会場へと足を運んだ。初日の午前中は上海自然博物館を見学、午後からシェルショーに参加した。今回は前年と比較し開催規模が大きく、中国国内をはじめ海外からも多くのディーラーの出展があった。未所有の貝のうち特に興味のある物を購入。オークション大会も開催され盛況であった。 エクセルファイル映写。
【千葉県の完新統貝類―各産地を反時計回りで紹介】 花岡義昌氏
神奈川県よりも比較的開発が遅れた千葉県の産地を俯瞰的に紹介した。現在も観察可能な産地ばかりである。当該産地における特に注目すべき産出貝類である熱帯種のタイワンシラトリ（茂原市産）、現生では稀産なチリメンユキガイ（匝瑳市産）、生息環境が特殊なフルイガイ（匝瑳市産）の解説に重点を置いた。 標本回覧、レジメ配布、パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2022年2月20日（日) 文京シビックセンター
【総会】
厳正な選挙の結果、雑賀俊之氏が新会長として選出されたことを報告。
【驚異の化石モミジソデの世界】 知野光雄氏
ジュラ紀から白亜紀に発達したモミジソデ科化石は、外唇の袖状伸長や異常に長棘の発達など驚異の奇想天外な造形美を誇る。化石分布は地球規模で仏、蘭、伊、米、加、アルゼンチン、北海道からも得られる。現生は６種で生きた化石と言われる。欧州図鑑の表紙に掲げられた。WENZウェンツの古生物学第６冊軟体動物に示された各属を中心に解説。 標本回覧、レジメ配布、パワーポイント映写。
【貝の研究法】 佐々木猛智氏
採集、分類、標本作製方法などについてアマチュアにも分かりやすく解説。種を同定するには殻及び軟体部の観察、ＤＮＡ解析が主流になっている。ＤＮＡ解析は従来の分類体系を検証する意味でも有効。その他、電子顕微鏡による殻の構造観察などを組み合わせ精度を上げている。殻の外形観察では数値データをグラフ化することにより、初めて種毎の分類形質が浮かび上がることもある。デジカメ、ＧＰＳなど手軽に使用が可能になった道具を活用することも肝要。採集した標本に学術的な価値を持たせるための整理方法、ラベル作成方法についても言及した。 パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2021年12月12 日（日） 文京シビックセンター
【さあ、キセルガイに会いに行こう】 雑賀俊之氏
陸貝ビギナーからの「キセルガイはどこに行けば会えるの?」、「どんな環境を捜せばいいの?」といった質問に答える形で、関東、東北、中部のキセルガイの聖地ともいえる生息地15 ヶ所について最寄駅からのルート、生息地の景観、ブナ林や石灰岩地帯などの特色、そこで会えるキセルガイの種類、現地での生態、その他の見どころを紹介した。 パワーポイント映写、資料配布。
【千葉ポートパークで拾える貝類】 谷口智彦氏
千葉県千葉市にある千葉ポートパークで拾える貝類を紹介。赤潮や青潮が発生する人工海浜の中で生息する種として、イシダタミ、アラムシロ、ムラサキイガイ、ミドリイガイ、バカガイ、アサリ、ホンビノスガイなどを確認。人工海浜を造成した時に持ち込まれたと思われる砂からはシドロガイ、メダカラ、フミガイ、モシオガイなどが得られた。食用後などに廃棄された種としてアカニシ、チョウセンハマグリなども見られた。
パワーポイント映写。
【新しい知見の紹介】 上島励氏
【バザー】 標本多数の提供があった。
2021年10月17日（日） 文京シビックセンター
【奄美大島 土浜の思い出】 石井健一郎氏
奄美大島土浜での採集実績について報告。採集方法や約40年間で採集した貝の内、興味深い
種について紹介。フデシャジク科については、ひたちおびにて連載中の「クダマキガイ諸科を考察
する」を引用し、当地で産出する貝と比較し解説した。また、オオシマボタルの色彩変異、最近の
打上げ傾向、近隣の土盛海岸での採集実績についても言及した。 パワーポイント映写。
【コモドドラゴンとフローレスのAsperitas】 細田俊氏
これまでの小スンダ列島への７回の陸貝採集の旅について詳細の報告。コモド島では、致死性
の毒を持つコモドドラゴンから観光客を守るため必ずガイドが付く。ドラゴンは怖いがカタツムリは
見たいとガイドに伝え、通常とは別のルートを行き、ドラゴンと目的の陸貝に出会えた。フローレス
島のAsperitas属の美しさと形態の多様さを標本と接することで実感できた。
パワーポイント映写。標本閲覧。
【クマサカガイの標本を見てみよう】 知野光雄氏
クマサカガイ科各種では周縁部にシラスナガイ等円い二枚貝の内面を常に上向きに、またヒヨク
ガイの割片やイモガイ上科の巻貝も放射方向に固着させる。他に砂泥礫片、サンゴ片等の「他物」
を固着する等、種毎に嗜好が見られる。対象物を探し、選別、切断？セメントで固着する。海底砂
上に移動痕跡を残す。その段取り、集中、スピードに着目した。 標本閲覧。レジメ配布。
2021年6月20日（日） 文京シビックセンター
【日本貝類学会令和３年度オンライン大会の報告】 知野光雄氏
5月22、23日にオンラインで開催された日本貝類学会令和３年度大会（於大阪市自然史博）につい
て報告。一般貝類採集者、収集家の視点から興味深い10発表について紹介した。今年の特別
講演は「干潟の地下で暮らす：共生貝類の多様性・生態・進化」であった。レジメ配布。
【似ているような違うような、フデシャジクの仲間】 都築章二氏
今までに千葉県、和歌山県、沖縄県の各地で採集したフデシャジク科のヒサゴコウシツブ、
チチジマコウシツブ、クロフコウシツブ、オオクロフコウシツブ、テンスジコウシツブ、
トウキビコウシツブ、ウスイロコウシツブ、カスリコウシツブ、シラサギツブ類似種の採集標本を
近海図鑑、大山写真集、仏自然史博等の画像で比較し、形状、原殻、着色等の類似点、相違点
を解説。採集道具や一部採集地の風景を写真紹介した。パワーポイント映写。
【貝殻の殻皮にみる軟体動物の生息域多様化と適応進化
−深海・淡水・陸域の現生と化石を例に−】 吉村太郎氏
多様な環境に生息域を広げてきた軟体動物の適応と進化の例として、貝殻の表面を覆う有機膜
「殻皮」に関する最新のデータを紹介。貝類が外環境に直接触れる殻皮には、さまざまな形態、
微細構造、組成が見られ、その適応的意義に注目した研究を進行している。また、化石に保存され
た殻皮の構造や成分から、。古環境の復元にも挑戦中。コレクターと貝類学徒の双眼からのぞいた
普遍かつ多様な貝の世界を紹介した。パワーポイント映写。
2021年4月18日（日） 文京シビックセンター
【日本貝類学会大会の報告】 知野光雄氏
昨年12月5日にオンラインで開催された日本貝類学会令和２年度大会の報告。
講演の中から一般貝類採集者、収集家の視点で興味ある10発表を紹介した。
レジメ配布。
【貝類の入門書あれこれ（第２回）】 丹下和仁氏
前回に続き初心者用ポケット図鑑類、啓蒙図書について戦前から昭和時代の書籍のうち
「原色貝類図」山川黙ほか10数点を紹介。和名、表紙、代表的ページを示しながら、
今日の視点で見ても色褪せない古書の見どころや魅力を解説した。
【東京湾口の貝たち】 石川謙二氏
東京湾口近海域には、2,900種もの軟体動物が生息している。今回40数種の代表的有名種に
ついてそれぞれ和名の由来、採集者などエピソードを交え解説。かつては網干場で簡単に採集
出来たキンギョガイも今では全く見られない。やや深場のオキナエビス、より深海に棲む
ウスヒタチオビなどを紹介。珍貝・稀産種の表現と、収集家の評価、入手難易度などにも触れなが
ら東京湾口の貝類の貴重さを示した。パワーポイント映写。
2020年10月18日（日） 文京シビックセンター
【北海道旅行で拾った貝】 清水利厚氏
2018年から2020年に北海道の日本百名山７座とオホーツク海岸で得られた貝を紹介した。陸貝は後方羊蹄山
の標高900m地点でオナジマイマイ科エゾマイマイが得られたのみであった。海産貝類は斜里町峰浜海岸で
ユキノカサガイ科、タマキビ科クロタマキビ、エオバイ科エゾチヂミボラ、ニッコウガイ科が得られた。
打ち上げ状況と転石帯の貝類生息状況を紹介。標本回覧、クロタマキビ標本配布、パワーポイント映写。
【キセルガイの系統分類、最近の話題】 上島励氏
表記の進行中の研究の中から、下記二つの話題をお話し頂いた。
１．カモハラギセルの分類上の位置について
２．ナミギセルとその亜種、近縁種が、いくつかの地理的クレードに分かれる可能性について
【バザー】 標本多数の提供があった。
2020年2月16日（日） 文京シビックセンター
【総会】
2019年度活動と会計の報告、2020年度の運営案について役員より方針説明、参加会員より同意を得た。
【新春放談「貝殻をじっくり見ると・・・」】 知野光雄氏
１．「二枚貝に於ける棘の成長・開口方向 マボロシハマグリの不思議？」
管棘、半管棘を生じるショウジョウガイ等の二枚貝、ホネガイ等の腹足類は棘がすべて成長方向に開くのに対し、
メキシコ西岸、ペルー産のマボロシハマグリ、ツキヨノハマグリ、バラハマグリ等諸種の棘は成長方向と逆（殻頂）
向に反帰り成長し僅かに開く。その奇観に着目した。 パワーポイント、レジメ配布、標本閲覧。
２．「カサガイ類の殻内面に注意！」
オオツタノハ、トガリウノアシ、オオベッコウガサ等では、外套腔の二次鰓に対応し殻内面に左右６〜１０対の馬蹄
（U字）形筋痕を生じ、大型個体では節状に肥厚隆起する。カサガイ類諸種の標本内面の魅力を紹介。
Powell,1973、Wilson B,1933 図鑑、パワーポイント、レジメ配布、標本閲覧。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介、恒例のバザー等で盛り上がった。
2019年12月15日（日） 文京シビックセンター
【市場にやってくる青い目の貝たち（食用貝類）】 石川 謙二氏
長年にわたり水産物流通業に従事した氏が築地市場で出会った貝類について紹介。築地市場には世界中から水産
物が集まり、一般には目にすることが難しい貝類に接することも多い。アワビモドキ、ハルカゼ、氏がクロミルガイと名付
けた Cyrtodaria siliqua （キヌマトイガイ科）など、食材として根付いた貝もあるが、日本人の嗜好に合わずサンプルの
みが入荷、その後一切入手出来なくなった貝もある。また食材として根付いた貝も、流通コスト削減のため現地で貝殻
が取り除かれ、肉のみが入荷するケースも多々あるとのこと。市場における販売価格と、標本商による販売価格の比
較も興味深かった。パワーポイント映写。
【リンネについて考えてみました（３）】 鈴木 孝政氏
リンネウスによって書かれた「自然の体系」第10版の中のVERMES（蠕虫）703種（ただし、702、703が脱漏）について、
現代の分類体系に従い一覧表を作成。横軸には第10版において使われている通しナンバー、属名、所蔵標本のうちの
最大のものを中心にサイズと産地（国名のみをISOの３文字表記に従った）他を挙げた。第12版については現在捜査中。
レジメ（一覧表）配布。
【東京貝類同好会 陸貝観察調査会報告】 石井 健一郎氏
あきる野市養沢付近で行われた陸貝観察調査について報告。主として大岳山鍾乳洞付近、三ツ合鍾乳洞付近を調査
し、死殻を含め16種が確認された。詳細については「ひたちおび130号」にて報告予定。パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2019年10月20日（日） 文京シビックセンター
【ペルーの中央高地を訪ねて】 大谷 ジャーメン ウイリアム氏
2019年5月28日から6月14日にかけて、ハンガリーのAndras Hunyadi氏とともにペルーの中央アンデス高地帯を旅しま
した。標高3〜4000mの高山帯から6〜700mの熱帯地域まで巡り、殻高100�伉兇�Megalobulimusから2mm弱の左巻き
ゴマガイAdelopoma、キセルも東洋区のワニグチギセルに似たPeruiniaやColumbiniaの他、高山棲のParabalea等、
新世界の様々な陸貝達に出会うことができました。名物料理のcuy（モルモット）も味わうことができ、薄い空気に喘ぎな
がらもペルビア〜ンな時を満喫しました。
【脅威のタカラガイ化石 Cowry Fossil 現生種に残る特徴】 知野 光雄氏
タカラガイ化石は豪、仏を中心に南ア、インドネシアから産出する。30�僂竜霏膽錙�底面拡張、鰭状張出、瘤疣密集、
殻前後の嘴状伸長、輪郭の方形盛上り等、奇想天外な化石種が多い。白亜紀末期、新生代第三紀の暁新世、始新生、
漸新世、中新世、鮮新世、第四紀更新世と氷河期を経て以降の海水面上昇を概観した。同属現生種に特徴痕跡が見ら
れる。 豪州タカラガイ化石図鑑、標本回覧、レジメ配布。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2019年6月16日（日） 文京シビックセンター
【最近の四国調査旅行から】 清水利厚氏
2019年4月に愛媛県佐多岬周辺、明浜海水浴場、由良半島、御荘湾の干潟、宿毛湾の砂浜及び伊予灘の磯浜で得た
貝類を紹介。房総ではあまり見られないコノボリガイ、キッコウダカラの打上があった。明浜の打上貝の一部は、同行の
雑賀俊之氏から「打上げられる貝ではない」と指摘があり、長浜町沖浦で行われた四国貝類談話会で石川裕氏から
「佐賀県唐津沖の海砂が養浜されている」とご教示があった。パワーポイント映写。
【沖縄県恩納村ドレッジで採集したスカシガイの仲間】 都築章二氏
沖縄県恩納村瀬良垣水深5mにおいて2017年にドレッジ採取した砂より抽出したスカシガイ類を紹介した。
バラエティーに富む殻の特徴を画像で説明、チドリガサ類・フタカドスソキレ類は殻表付着物を除去しないと種の同定が
不可能で、その除去方法、使用する道具（カリカリ針）の作り方を解説した。パワーポイン映写。。
【日本貝類学会令和元年大会の報告】 知野光雄氏
原殻、5月18、19日に東京家政学院大で開催された日本貝類学会令和元年度大会について、一般貝類採集者、
収集家の視点から興味深い発表10題を選び紹介。レジメ配布。。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2019年4月14日（日） 文京シビックセンター
【浮遊性巻貝類の化石について】 花岡義昌氏
木更津市桜井・館山市西郷で採集した浮遊性巻貝類化石13種（カメガイ類、ウキマイマイ、ウキビシガイ等）各種の
特徴、採取方法を解説。殻が薄質なものが多く、保存状況が良いものは少ない。併せて、日本学生科学賞中学生の部
で内閣総理大臣賞を受賞した中野優子さんの研究（フジノハナガイの生活史）、貝類の整理用仕切りケースを紹介。
標本回覧、レジュメ配布、パワーポイント映写。
【銚子産貝類の記憶 渡辺富夫氏の遺品スライドから】 知野光雄氏
銚子産貝類の収集・研究に業績を残した渡辺富夫氏に因む各種、銚子産貝類の漁労、採集史、1960年頃の最盛期
の模様、同好会講演等の足跡を辿り、アケボノオキナエビス、オキナエビス両種の飼育生態写真の他、ハズレシタダミ、
ワタナベオキナエビス、特大ヨモスガライモ、ニッポンオトヒメゴコロ巨大変異種、アケビガイ等に関する逸話を解説。
レジュメ配布、スライド映写。
【原殻、初生層の驚き】 知野光雄氏
原殻、初生殻に特徴のある腹足類各種を紹介。この特徴は一定の科、属、種に限られる。クリイロケシカニモリガイ科
各種、ガクフボラ科のイナヅマインドボラ属各種、ダンシャクボラやハクチョウボラの巨大原殻、サオトメヒタチオビ等の
属、種では分類の決め手になる。他にアラフラオオニシ、シャンクガイ、ホサキリュウグウボタル、イモガイ科の数種
など。標本回覧、レジュメ配布。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2019年2月17日（日） 文京シビックセンター
【総会】
平成30年（2018年）度活動と会計の報告、平成31年（2019年）度の運営案について役員より方針説明、参加会員
より同意を得た。
【タカラガイの地味な楽しみ方 背線Dorsal Lineについて】 知野光雄氏
タカラガイ類の殻背面には孤状の淡白色背線があることが知られ、外套膜が側面より競り上がり殻を覆い葉端が
接するところに生じるとされる。カルシウムによる殻の成長肥厚、模様形成に呼応し、背線部は触ると凹みを生じる。
多くの種を調べると中央付近、側面近くに偏在（カノコダカラ類）、殆ど背線を生じない種（ナンヨウダカラ）や同種内
でも個体による変異がある。斑紋変化（ハラダカラ等）、背溝（イボダカラ等）も表現型であろう。
レジメ配布、標本回覧。
【日本の貝類学を引っ張ってきた人達】 奥谷喬司先生
既に他界された方々に接した時のエピソードを、ユーモアを交え各氏のお人柄を想起させつつお話しいただいた。
学生時代の恩師猪野俊博士の下での卒業論文、GHQのカーン博士との京都の寺町昭文氏訪問、瀧庸博士の北隆館
「学生版原色動物図鑑水棲動物篇」の貝類標本スケッチ、吉良哲明氏が主宰する夢蛤への関わり、黒田徳米博士、
波部忠重博士、大山桂博士による「相模湾産貝類」の校正お手伝い、「世界の貝」の鹿間時夫博士、堀越増興博士、
河村良介コレクションの科博受入れ、櫻井欽一博士ぼたんの帳場、中上川小六郎氏の採集等。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介、恒例のバザー等で盛り上がった。
2018年12月16日（日） 港区立生涯学習センター
【南房総の貝たち】 石川謙二氏
南房総に足繁く通い、採集した貝類を美しい写真で紹介。
長年にわたり漁師たちとの人間関係を築いたからこそ得られた珍貝たちに一同目を見張った。特に近辺を代表する
オキナエビス、ヨコヤマテンガイ、コエボシ、マボロシヒタチオビ、ユメノヒタチオビ、ハリヤマウミギクなどは垂涎の的で
あった。また、某著名貝類標本商がそれらの貝をいくらで販売していたかを紹介。
貴重度を実感として感じることができた。パワーポイント映写。
【リンネについて考えてみました（2）】 鈴木孝政氏
貝殻を持つ軟体動物のうちリンネにより「システマ・ナチュレ」に記載された貝について、中間報告として資料説明をし、
標本の回覧を行った。同時に、ラテン語がその完成度の高さ、共通語として優位性、およびグーテンベルクの活版印刷
の発展と相俟って、書籍はラテン語で出版されることが多かったと指摘。当時の社会の自然への理解の急速な拡大に
より、普遍的なコンスタントが模索されていた時代でもあったと結論した。
【伊豆・天城観察調査会報告】 石井健一郎氏
７年ぶりに伊豆・天城で行われた陸貝観察報告会について報告。湯ヶ島から河津七滝の範囲を調査し、確認種、生息
環境の変化について言及した。詳細については「ひたちおび」128号に報文を掲載予定。パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2018年10月21日（日） 文京シビックセンター
【奄美大島でのスキューバ潜水調査 貝類採集の思い出】 白井祥平氏
1955年春、奄美大島名瀬から６時間山道をバスで南端の古仁屋に至り12日間大島海峡、瀬戸内全域で海中調査を
行った。以後幾たびもの奄美大島調査では思い出深い体験があった。マベガイ真円真珠の試み、GHQカーン博士との
出会い、代表的南方貝類を網羅する375種を採集報告した。本邦初のモスソアオイガイ報告、ウグイスガイ科各種の他
多くの二枚貝類を得た。トンボガイの蓋に刺された女性の症例、ニコン潜水カメラ撮影の初期試行、朝鮮戦争特需のな
かで海軍の沈没艦艇引き上げ計画、当時の珍品コセンジュガイが掌中から滑り落ちた話ほか興味深い多くのエピソー
ドを伺った。 パワーポイント映写。
【キセルガイ飼育を楽しむ】 雑賀俊之氏
最近２年間で採集した国内30か所、40種のキセルガイの飼育観察記録を生態写真で報告。キセルガイは卵胎生で爆
発的に増える種や、卵生・少産で増えにくい種など様々だが、陸貝の中では比較的飼育しやすい。飼育ケース、床材、
餌についても紹介し、湿度やケースの汚れなどに注意すれば、ケース内で孵化した貝がさらに子孫を増やす。屋久島、
徳之島、五島、剣山などのキセルガイ生息地の現況についても報告があった。 パワーポイント、資料配布、標本回覧。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2018年6月17日（日） 文京シビックセンター
【日本貝類学会 創立90周年記念大会報告】 知野光雄氏
5月26、27日に東京海洋大で開催された日本貝類学会創立90周年記念大会について、公開シンポジウム「日本の
貝類の多様性と保全」から３題、一般採集者収集家の視点から興味ある発表10題を解説。 レジメ配布。
【貝類生態写真の紹介- 仏自然史博ポスター・東大三崎臨海 海の観察ガイド】 知野光雄氏
仏自然史博物館が世界各地で主催した海洋生物調査ポスター６種を紹介。貝殻と軟体の色彩模様対比、触角や足
の特徴などをシャーレに伸ばした軟体が美しい写真で表現されている。東大三崎臨海実験所が日本財団の支援で作成
した「海の観察ガイド」シリーズ等小冊子７冊には身近な三崎近郊の浅海種の生態が掲載されている。 ポスター掲示、
小冊子群回覧。
【2017沖縄県恩納村人間ドレッヂ採集】 都築章二氏
昨年10月、沖縄県恩納村瀬良垣水深５mにおいて、調理用ザルを用いて砂を採取した。採取場所の地理的位置、この
場所を選んだ理由、砂採取作業、砂採取道具のザルとネット、ソーティング作業、貝殻以外の砂の内容物、同定の参考に
している本を説明した。抽出した種の中から気になる20種とフトコロガイ科の写真を紹介。ベニシワマツムシ、
ホソシワノミニナ、カゴメノミニナについては色彩変異を解説した。 パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2018年4月22日（日） ファミール本郷
【千葉県館山市で得られた完新世の貝類】 花岡義昌氏
現在より地球が温暖化した時代が完新世にあった。この温暖期の貝類が豊富に産する地層が千葉県南部の
館山市に分布している。従来知られている種類の他、新たな種類を微小貝（カネコスズカゴ、ウキツボ、コマツボモドキ、
ヒメハツカネズミ、コモンキリオレ、ヒトハミジンハグルマガイ等）を中心に紹介。パワーポイント、レジュメ配布。
【サザエ科の蓋に注目！興味尽きない変異の数々】 知野光雄氏
人生関係も豊かで、強固な殻と蓋で防御力が高いサザエ科は「蓋が最も面白い」。彫刻、顆粒、棘、渦溝、隆起、
中心孔凹み等蓋も変化に富みがある。殻にも多様性が認められる。サザエ属の11亜種の代表種と夫々の蓋を中心
に紹介。標本回覧、パワーポイント、資料配布。
【貝類図鑑・美しい描画図鑑の世界】 知野光雄・丹下和仁両氏
科学啓蒙書であり同時に美術的価値も大きい貝類図譜、美麗学術描画図鑑、精緻線画学術図録、挿画入門書、
欧州における日本産貝類描画図録、日本の貝類描画図鑑（貝千種、ロシア美術図鑑、イモガイ描画図鑑、スウェンソン、
サワービー版画彩色図譜、入門書でのフナクイムシの家屋破壊図他）を紹介。図譜回覧、パワーポイント、資料配布
【バザー】 標本多数の提供があった。
2018年2月18日（日） 文京シビックセンター
【総会】
平成29年（2017年）度活動と会計の報告、平成30年（2018年）度の運営案について役員より方針説明、参加会員
より同意を得た。
【本物はどれか？誤同定が散見される有名種について】 知野光雄氏
内外の多くの図鑑で示される有名種には別種・亜種・フォーム・シノニム等多くの見解が交錯する。
ソビエウラウズカニモリ、シワオキニシ、クスダマボラ、クロハライトカケ、アッキツブリ、カラフデ、ヨロイオトメフデ、
ベニツボイモ、オトヒメシャジク等20種の例を紹介。パワーポイント、レジメ配布。
【化石もはじめてみませんか？−新世代化石を例に】 芳賀拓真博士
コレクションの脇役になりがちな貝化石であるが魅力があふれる。新世代の化石を中心に種々視点から紹介。
貝をキーワードに化石・現生を問わず協同していた往時の様子、地質・古生物学者が現生貝類の分布を調査し重要
な業績を挙げながら忘却されてきた事情、化石は深海棲種を知るのに有利であること、化石から現生の生態を復元、
紫外線ランプを用いた色彩パターンの復元等の方法も解説。貝化石が身近に感じられる工夫がなされた。
パワーポイント。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介、恒例のバザー等で盛り上がった。
2017年12月17日（日） 文京シビックセンター
【リンネについて少し考えてみました】 鈴木孝政氏
冒険の時代の18世紀中葉、リンネの使徒達と呼ばれる17人の俊英により七つの海を乗り越えて、厖大な自然物
がもたらされた。リンネはそれらの標本を基準として単一の識別名（種小名）を与え、その上位に当たる（属名）との
２語で示し、全ての実物標本と共に残した。「自然の体系」の標本類は、現在でもリンネ協会の金庫の中に遺され、
デジタル映像http://linean.orgにより見られる。資料配布、関連標本回覧。
【近海図鑑第二版の北方分布種の考察（銚子・山陰以北）】 樋口滋雄氏
近海図鑑に多くの追加種が掲載されたことを踏まえ、演者が採集した各地の標本を検討し、宮内、佐々木、伊藤、
五十嵐他諸氏による北の貝の知見も参考にしつつ、約50種の具体例をもとに産地分布がオホーツク沿岸（ツメタガイ）、
北海道全域（イシカケガイ）、北海道南西、東部（キヘイジエビス）、日本海（ミガキボラ）に延伸していることを示した。
標本回覧、レジメ配布。
【ノシガイ近隣諸属の分類あれこれ】 知野光雄氏
潮岬オゴクダから沖縄、フィリピン、中部西太平洋、インド洋南西部の浅海産魅力グループであるノシガイ類につき、
最近10年間の近隣各属を含む新種と文献の紹介。Engina属への統合、チャガスリノシガイの生息深度、イロガワリ
ノシガイの種内変異、新属となったイトマキノシガイ類の反返る特徴、クチベニホラダマシ属との違いを示した。
パワーポイント、レジメ配布、標本展示。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2017年10月15日（日） 文京シビックセンター
【最近の活動から】 石井健一郎氏
・徳之島、神津島に遊んで： 貝とは無縁の友人との旅あった為、十分な時間は取れなかったものの、それぞれの
島で観察を試みた。神津島では阿波命神社でホンダギセル、ミヤケチャイロマイマイを観察した。徳之島ではリーフ
内での素潜りで貝砂を採取。帰宅後のソーティングで打上げ採集では望めない良質の標本を得ることができた。
・標本室をつくる： 自宅に標本室を作っていく過程を写真で時系列に紹介。現在までの整理状況、これからの課題に
ついて報告。パワーポイント映写。
【日光陸貝観察調査会速報】 河辺訓受氏、石井健一郎氏
9月30日に行われた東京貝類同好会日光陸貝観察調査会の結果を速報で紹介。詳細については本号記事を参照。
パワーポイント映写。
【四国貝類談話会（徳島大会）報告】 河辺訓受氏
徳島県南部の那佐湾（多数の新鮮な死殻スイショウガイ）、鈴ケ峰及び徳島市内の県立博物館で行われた四国
貝類談話会の様子と、その前後に個人的に訪れた阿南市大潟干潟（ゴマツボモドキ）、室戸岬（アコヤザラ、キザミ
シタタリ）及び瀬戸内海の豊島（ショウドシマギセル）での成果が報告された。（カッコ内は注目すべき採集、確認種）
【バザー】 標本多数の提供があった。
2017年6月18日（日） 文京シビックセンター
【ウニレイシダマシ考】 西村和久氏
三宅島・八丈島・父島・硫黄島で採集したウニレイシダマシを図示。生息水深は八丈島20m以浅、父島5m以浅。
大きさは、殻高2〜3�僉３或宛�部の突起が顕著。他海域の情報を図示（和歌山県・大分県・鹿児島県・沖縄県・
台湾・フイリッピン）。他海域には外唇肩部の顕著突起個体は見られなかった。
市販のウミウシ玩具（アオウミウシ等全5種）入りチューインガムも紹介。 パワーポイント映写、レジメ配布。
【最近の調査から−高知県横波三里など】 清水利厚氏
平成28年5月に高知県横波三里の潮間帯観察で見られた貝類と、同年6月に山梨県甲斐駒ヶ岳黒戸尾根の
宝剣岩（九号目、標高2,820m）付近の花崗岩上で発見した体長10cmのヤマナメクジ Meghimatium fruhstorferi
を紹介。日本最高標高の生息記録と思われる。 スライド映写。
【2016年秋、沖縄県恩納村人間ドレッジ】 都築章二氏
昨年9月〜10月にかけて2度にわたり沖縄県恩納村瀬良垣において、調理用ザルを用いシュノーケリングで砂を
採取した。砂の採取方法、この場所を選んだ理由を説明、採取した砂より抽出した一部100種余りを選びパワー
ポイントで解説した。ヌノメシャジク科、シズクニナ科、マンジガイ科、フデシャジク科等の200種程のケース入り
標本と、写真アルバムを展示。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2017年4月23日（日） 文京区民センター
【与那国島の陸・淡水貝】 雑賀俊之氏
日本最西端の与那国島の陸・淡水貝の生態や風物をスライドで紹介。最高峰の宇良部岳周辺は豊かな自然
が残り、ヨナグニの名が付けられた固有種が健在。ヨナグニマイマイと共に山頂で見られるシュリマイマイは沖
縄本島のものより重厚。上水道源である田原川は短いながらも多様な生物が生息。上流部の田原水園は親水
環境として整備され、淡水のアマブネ類やカワニナ類が観察できた。パワーポイント。
【貝類の入門書あれこれ】 丹下和仁氏
初心者が最初に手にする安価な入門用のポケット図鑑類は時代とともに消えてしまうことが多く、簡易装丁か
らボロボロになることもある。最近懐かしさもあって古本を集め出した。掲載された貝類や、和名表記、出版年、
価格など、戦前、戦中、戦後とそれぞれの時代の空気が反映されていて興味深く、諸先輩方が初心の頃手に
取ったと思われる図鑑類を時代別に紹介した。パワーポイント、冊子一部回覧。
【日本貝類学会平成29年大会の報告】 知野光雄氏
和歌山県白浜町で4月15、16日に開催された日本貝類学会平成29年大会の報告。一般貝類採集者、収集
家の視点から興味ある10発表を選び解説。日本甲殻類学会との共催シンポジウムの講演も紹介した。
レジメ配布。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2017年2月19日（日） 文京シビックセンター
【総会】
平成28年（2016年）度活動と会計の報告、平成29年（2017年）度の運営案について役員より方針説明、
参加会員より同意を得た。
【「日本近海産貝類図鑑第二版出版」の裏話】 奥谷喬司先生
16年を経て第二版が出版された。貝類図鑑には収集家に向けた絵合わせ的な意味と最新の分類体系
を反映する二側面がある。分子系統研究の進展によって目、科の配列も一変した。イカ・タコ類が巻貝の
次に、イモガイ科の中でも大きく順番が変わり、クダマキ科も12科に分かれた。分担執筆者それぞれ個性
もありsp種や心ならずの奇妙な和名も登場する。多くの新種も掲載でき、ホロガイの逸品も載せられた。
余談ながらブシェ博士の分析によれば、この15年間に年平均433種の新種記載があり、半分がインド太平
洋産で半数が34名の記載者に集中する。Venusに記載された新種はこの間に122種に留まる。
【海中写真で捉えた海底の貝類生息状況】 高重博氏
ダイビングで撮影した貝類の生態写真により産卵形態や生息状況などを紹介。動かない貝類を撮影
する事による苦労話。同じポイントを潜り続ける事により長期観察が出来る。深場まで岩礁の続く伊豆大島
ではオキナエビスやニッポンダカラなどが低水温時に上がってきてダイビング観察できた。湧昇流の影響
を強く受ける西伊豆大瀬崎では、浅い深度でもソフトコーラルの種類が豊富で多くのウミウサギ類が確認
できる。一般的に魚網が届かない岩礁陰や転石下など、珍しいとされてきた貝類の生息環境を解説。
スライド映写。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介、恒例のバザー等で盛り上がった。
2016年12月4日（日） 文京シビックセンター
【穴あけ肉抜き法の勧め】 上島励氏
コレクターにとって永遠の課題である「肉抜き」の一方法として表題の方法を勧める。殻頂近くに微小な穴を
空け、盲管となっている殻内の陰圧状態を解消して肉を抜けやすくした上で、水圧で押し出す方法である。
メリットとして�‘�抜きが困難な微小種でも可能、��乾燥時間の短縮、バインズ病の防止、�Ｆ霏里鮟�つけ
ず確保出来る、等が挙げられる。殻に傷を付けることに抵抗がある向きもあろうが、肉を残し腐らすより標本
の完成度は高まる。
【身延山観察調査報告】 石井健一郎氏
会員８名、特別参加１名により行われた調査会について報告。身延山頂上から西コースを経て麓までに至る
各ポイントの陸貝生息状況を報告。個体数は少ないもののツバクロイワギセル、ツメギセル等をはじめ９種類
ものキセルガイの生息が確認されたことは収穫であった。また、ミノブマイマイ、ビロードマイマイ、ミヤマヒダリ
マキマイマイなどの興味深い貝も散見された。詳細は「ひたちおび」誌上で報告予定。
【フィラデルフィア・シェルショーについて】 上島励氏
フィラデルフィア・シェルショーは地元のシェルクラブが主体となり開催されるイベントである。シェルクラブ
会員が各自自慢のコレクションを展示することが主体であるが、内容は学術的展示、コレクター目線の展示、
幼児・小学生などによる学習的展示など広範囲に及ぶ。また貝細工の展示などもあり、アメリカと日本との
貝類愛好家の気質の違いが興味深い。同好者の人口を広く維持するという点で大きく機能しており、日本に
おいてもこのようなイベントが出来れば有意義と思われる。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2016年10月16日（日） 文京シビックセンター
【この夏の収穫】 石井健一郎氏
奄美大島で篩を持って潜り、海底の砂をすくう所謂「人間ドレッジ」を試みた。その結果、オニノキバフデ、
コトツブ類多種、ナミノコザラ等新鮮な貝を得ることが出来た。打上げ貝はかつてメッカだった土浜に代わり
土盛海岸が注目されている。持ち帰った砂の中からは多彩な微小貝が出てきた。鎌倉市材木座海岸では
浅場での砂フルイでヒメトクサ、マルヘノジガイなどの他、数種の希少なトウガタガイ科貝類を観察した。
【北海道採集旅行で得た新知見】 河辺訓受氏
北海道を３度訪れ、打上げ、刺し網、トロールなどの従来の採集方法に加えてタコ箱採集、広大な湿原、
原野における微小陸貝と淡水貝の採集という相模周辺などでは不可能な体験、さらには冬季流氷の影響
を受ける転石海岸での磯採集も試みて多くのことを学んだ。成果の一端は標本回覧で披露された。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2016年8月28日（日） 文京区民センター
【東日本大震災後の相馬漁港を出ずる魚介類の情報】 樋口滋雄氏
東日本大震災発生当時の被災地状況と津波の破壊力、速度、被害などを解説。福島県相馬漁港における
被害状況と、５年間の年度別漁労過程で現況の紹介。 現在の主要貝類種はシライトマキバイ等である。
震災前の少産種であったトロール漁による貝類のクサイロギンエビス、キヘイジエビスなどは得られていない。
東北沿海の等深線図を用いて説明。 尚、魚種調査では軟体動物の汚染は当初より検出されていない。
パワーポイント、レジメ配布。
【北の貝放談（その１）シライトマキバイ、ヒモマキバイの地方変化とその分布について】 樋口滋雄氏
市場などで灯台ツブと呼ばれ灯台をイメージする塔形のエゾバイ類は産出額も多い。シライトマキバイ、
ヒモマキバイなどの食用各種について、東北、北海道、日本海等の地方型を示した。それぞれの特徴はあるが
変異も大きい。またその近隣周辺種オオカラフトバイ、ミスジエゾバイ、ミズタニバイ、ホソジュズカケバイなど
を紹介した。 パワーポイント、レジメ配布、標本回覧。
【サガミイモの新分布域？亜種？別種？及びヨモスガライモ属の最新分類】 知野光雄氏
相模湾特産種サガミイモに近似する千葉県産出の化石標本、鹿児島県南西沖300m深からの死殻が得られた。
比較検討を示した。併せて、ヨモスガライモ、ヒナイモ、近年のヨモスガライモ属の最先端分類につき日本産６種
とニューカレドニアからの新種、文献と共に紹介した。本属は現在合計で25種を数える。
パワーポイント、レジメ配布、標本回覧。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2016年6月19日（日） 文京シビックセンター
【通勤圏内で拾った貝】 石井健一郎氏
ここ十数年間で逗子や鎌倉の海岸で得られた貝を紹介。一時的に大発生しその後殆ど得られなくなった
貝や、現在では生息していないと思われる貝の打上げ状況について説明。その他サクラガイ類やサガミコフジ
などこの海岸ならではの打上げ貝について言及。また、昨年より開始した材木座海岸、和賀江島貝類調査
についての中間報告も行った。パワーポイント映写。
【沖縄伊平屋島での採集】 都築章二氏
昨年11月、15年ぶり２度目の沖縄諸島最北の伊平屋島に行く。那覇空港より路線バスと「フェリーいへや」
を使用したアクセス方法や、島の様子、宿等を紹介。メインの採集地となった米岬ビーチでの転石採集や、
人間ドレッジによる砂取り方法を説明。多数採集のオガサワラボタル、ソビエツブ類他、転石採集や、帰宅後
のソーティングより抽出した小型種を、100種超クダマキガイ科を中心に解説。パワーポイント映写。
【スソムラサキイモ、チカゲイモ、ソナレイモ、ドングリイモについて】 知野光雄氏
多くの図鑑での扱いには混乱が見られ代表的個体が示されていない。スソムラサキイモは体層下部が紫
色で螺塔はやや高く螺層、体層上部に広く白斑を持つ。従来 scabriusculus が当てられてきたが、近年、
濃褐色で螺塔低く体層に白い帯を巻く coffeae のシノニムとされる。タイプ写真、図をもとに比較検討した。
チカゲイモ tenuistriatus ソナレイモ nucleus も本物を示した。写真・標本回覧。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2016年4月24日（日） 港区生涯学習センター
【日本貝類学会 平成28年度大会の報告】 知野光雄氏
習志野市の東邦大学において4月16、17日に開催された日本貝類学会平成28年度大会について報告。
貝類採集者、収集家の視点から興味深い10発表について紹介した。今年のシンポジウムは「10年後の
貝類学」であった。
【逗子・鎌倉貝類採集報告】 丹下和仁氏
逗子の浪子不動、鎌倉の和賀江島での貝類観察の報告をした。浪子不動の磯は底質が泥岩でカモメ
ガイ、イシマテ等潜行性の貝が見られ、和賀江島は干潟の中の転石海岸の転石下にはゴマフホラダマシ、
スジイリクリムシクチキレ、ウロコガイ類、石の側面にはチリボタン、マガキが観察された。
短期間であるが詳細に調べると思った以上に多様な種類が確認され地元の貝を見直す機会となった。
【エゾバイでもクダマキでもないBelomitridae フデガタツムバイ科の新設】 知野光雄氏
従来、アルバトロス号等の歴史的調査船によりインド太平洋の深海部各地から記載されたBelomitra
属の各種についてブシェ博士らの論文によりエゾバイ上科の独立した科として統合整理された。相模湾産
のB.viridis (Okutani, 1966)フデガタツムバイ、他科に置かれていた種も含め、インド太平洋に25種（うち
新種14種）、大西洋に5種が産出する。台湾北部からも良品が得られた。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2016年2月21日（日） 文京シビックセンター
【総会】
平成27年（2015年）度活動と会計の報告、平成28年（2016年）度の運営案について役員より方針説明、
参加会員より同意を得た。
【日本列島周辺の深海性腹足類相−科博の深海動物相調査から−】 長谷川和範博士
深海生物研究の歴史、および日本周辺の深海性貝類研究の歴史について概説、科博の深海動物相
調査の様子、その成果についてエゾボラ類の垂直分布、カシマナダバイやハズレシタダミにおける種内
変異など、多くの貝類標本写真とともに紹介した。比較的古くから研究されている三陸沖や、生物相が乏
しいとされる日本海にも、まだ多くの未記載種が残されている現状が明らかにされた。パワーポイント映写。
【S.P.ダンス「貝類収集の歴史」を読む】 知野光雄氏
17〜20世紀初めの貝類収集史、研究史、主要図譜を詳述した本書は初版から50年を迎えた。挿入銅版
画にはニチリンサザエ等の美麗種を掲げ、貝類学の始祖達の人物写真はリンネ、ルンプフ、カミング、
サワビー父子等の顔が並ぶ。コンペンディウム、近海図鑑で人名、地名、調査船名を見つけ往時を偲ぶこ
とが出来る。オオイトカケ、ホウセキミナシ、ウミノサカエ等の逸話も紹介した。パワーポイント、レジメ配布。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介、恒例のバザー等で盛り上がった。
2015年12月5日（土） 東京大学理学部二号館
【大分県旧蒲江町（現佐伯市）の島嶼（屋形島、深島）を訪ねて】 河辺訓受氏
九州貝類談話会への初参加を目的に九州を訪れた際、同会で開催される観察会に先駆け大分県の
二島を訪れ陸貝の調査を行った。蒲江港の３km沖に位置する屋形島は島全体にガレ場が多く一見陸貝
の生息に適しているように思える。しかし実際は個体数は少なく、特産種のウブギセル（スギモトギセル
亜種）を見つけるまで数時間を要した。他にクチマガリマイマイ属のカンダマイマイを確認。更に沖合の
深島においては特産のフカシマコベソマイマイやアズキガイ、スグヒダギセルを確認した。
【九州貝類談話会観察会に参加して】 清水利厚氏
８月１日〜２日に開催された九州貝類談話会の観察会報告と事前に個人で調査した大隅半島周縁の
海岸で確認された貝類について報告。大隅半島周縁の調査方法は打上げ、磯観察、潜水など多岐に
わたり、指宿市長崎鼻ではクワノミカニモリ、フナガタガイ、鹿屋市天神島ではヒメミミガイの生態等を
観察した。その他高須市、佐多岬、岸良海岸、タグリ浜などでの調査結果を報告。また九州貝類談話会
の観察会ではくにの松原・横瀬海岸にてイチジクガイの打上げが確認された。その他、九州貝類談話会
の概要について説明。パワーポイント映写。
【ダイビングで見た小笠原の近況】 高重博氏
小笠原の位置、父島周辺の地形に伴う海流と環境について説明。生物の進化や外部からの漂着に
ついてダイビングで観察された貝類の生態写真と他産地の同種との外部形態バリエーション、新種の
可能性について言及。ダイバーにしか観察出来ない貴重な生態写真は参加者の興味を大いに惹いた。
パワーポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2015年10月18日（日） 文京シビックセンター
【四国貝類談話会及び前後の調査採集報告】 河辺訓受氏
旧寒風山トンネル付近でのシロハダギセルなどの陸貝調査後、広大な加茂川干潟ではイヨカワザン
ショウを始め、ムラサキガイ、ゴマフダマなどの干潟の貝類を探査した。また、談話会前後に訪れた
別子、高縄半島、高知仁淀川町、倉敷市児島などでの陸貝調査にも言及した。
【マイクロＣＴを用いた微小陸貝の内部構造の観察】 上島励氏
医療分野などで広く使われているCT（Comuputer Tomography）法を貝類に応用し、微小X線を照射、
断層撮影することでクチミゾガイ類、ゴマガイ類などの殻の複雑な内部構造を詳細に観察した結果が
紹介された。
タイプ標本などの重要なものや個体数が少ない標本など殻を壊すことが出来ない場合でも殻の内部
構造を知ることが出来る新しい手法である。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2015年8月23日（日） 文京シビックセンター
【釧路、根室近海の採取報告】 樋口滋雄氏
北海道道東海域の漁労時期と主な分布種の報告。大型のエゾチヂミボラは、この海域の海水温が
低いためか港湾に牡蠣殻など付着物が少なく、金魚網を用いて容易に採取できる。また、厚岸湾の
人口砂洲アサリ島におけるアサリの害敵オウウヨウラクやヒメエゾボラ、タカホコシラトリ等につき採取
方法報告。 レジメ配布、エゾチヂミボラを採取した金魚網、標本回覧。
【バリ、ペニダ島のケヨン】 細田俊氏
ペニダ島は、バリ島の東南に位置する小さな石灰岩の島。ケヨンはカタツムリの類を指す現地の単語。
２回のペニダ島訪問から得た陸貝の内、５種に焦点を当てる。まず、島内にあまねく棲息する２種、
マレーマイマイとメダマイマイのペニダ島型について。次に島の固有種２種、色の美しい
Sasakina plesseni と小さなアツブタガイCyclotus lepidotus。それぞれ写真と実物標本により生態を
紹介。最後に新分布か新種と思われるシワクチマイマイを１種を披露した。
【シリキレ・シリオレ・クビキレになる貝類】 知野光雄氏
殻頂部が裁断（シリキレ）される属、種は腹足類に広くみられる。殻成長の途中での「再吸収」の一
表現であるが、欠損部の内部修復や裁断部の状態や特徴につき考察。学名との表現比較、尻切れ、
首切り等の用語も紹介。シリオレホラダマシ類、フトヘナタリ、クビキレシャジク、クビキレガイ類、シリ
オレギセル、アジアギセル等を紹介。 パワーポイント、レジメ配布、標本回覧。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2015年6月21日（日） 文京シビックセンター
【日本貝類学会 平成27年度大会の報告】 知野光雄氏
蘭越町において5月23、24日に開催された日本貝類学会平成27年度大会（初の北海道開催）について
報告。一般貝類採集者、収集家の視点から興味ある発表10題について解説した。今年の公開講演は
「漁業の優等生 ホタテガイ - その生態から資源管理まで」であった。レジメ配布、関連資料回覧。
【千葉県館山市沖ノ島観察調査会報告−補遺】 清水利厚氏
平成27年6月の調査会で採集された標本など、Family Turbinidae オニノツノガイ科のCetithium zebrum
(Kiener, 1841) ハナカニモリ、Cerithium egenum (Gould, 1849) ホソシボリツノブエ、Family Muricidae
アクキガイ科のMorula iostoma (Reeve, 1846) イトマキレイシダマシ、Morula funiculata (Reeve, 1846)
クロフレイシダマシの４種について、原記載及びタイプ標本写真による比較、再検討の結果を紹介、
パワーポイント映写。
【2015年3月 与那国島採集】 都築章二氏
2015年3月3日〜11日、沖縄県与那国島南部比川集落に滞在。周辺の採集場所、方法、そしてこの場所
を選択した理由を説明。リーフそばでザル掬いにて得た砂より抽出したノミフデ２種、白地に透明破線の
あるスイフガイの仲間、モロハボラの仲間、小型のアシヤガマの仲間、茶色の帯状着色のあるヘリトリガイ
の仲間、細いハツカネズミの仲間、キリオレの仲間他、興味深い種が得られた。18枚の画像をプロジェクター
を使い解説した。
【Characters and Meaning: Natural science in non-alphabetical language】 カロモン・ポール氏
日本の貝類学における和名の果たした特性・役割を様々な角度から検証。アルファベット言語での
分類学・二名法との比較しつつ、人生関係等の関わりから将来も展望。サザエの和名由来や漢字表記、
江戸時代の主要文献における代表種の和名、描画を紹介。欧米博物館でのラベル、日本貝類学の
創成期から現在に及ぶ「貝屋」といわれる人々の貢献、その特徴を解説。パワー・ポイント映写。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2015年4月29日（水） 港区生涯学習センター
【北方海域の今昔（歴史、地名、和名、分布）について】 樋口滋雄氏
第１部 日本周辺の北方海域の歴史（樺太、千島、北海道）と昔の概略地図及びこれら海域に分布
する主な代表種について説明。
第２部 人名、地名に因むこれら海域に分布する北の貝の報告と、主な種の写真紹介（34種）。
スライド映写、レジメ配布（歴史背景、昔の樺太、千島地図、海流及び主な北の貝の和名紹介）、
標本回覧（オオカラフトバイ、ヒモマキバイ、ミズタニバイ、ササキバイ、リシケバイなど）。
【オキニシ科の分類上の諸課題 亜種・変異？】 知野光雄氏
オハグロオキニシの赤紫殻口に白刻み歯、黒紫が広がる型等の変異型があり、近隣種ルカオキニシ
も潮岬オゴクダでは採集される。シワオキニシは殻口内唇部に黒彩斑が並び、奄美大島では赤斑となり、
小笠原産個体では斑が現れず白色である。イワカワウネボラ、ホソウネボラ、ハイイロウネボラの比較、
コナルトボラの顆粒多寡変異等について紹介解説。 レジメ配布、標本回覧。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2015年2月15日（日） 文京シビックセンター
【総会】
平成26年（2014年）度活動と会計の報告、平成27年（2015年）度の運営案について役員より方針
説明、参加会員より同意を得た。
【昭和天皇実録における貝類関係記述】 知野光雄氏
貝類を愛された昭和天皇の御幼少期の御関心、生物学御研究所、御用邸や行幸先各地での
御採集地名、内外の研究者の謁見や御進講、「相模湾産貝類」の刊行、記念貝類展の記述、さらに
登場する貝類種名や、研究者名、貝類を詠まれた御製等を紹介。資料配布。
【貝殻の形態学】 佐々木猛智氏
貝殻の形の共通性は螺旋を描く点にある。一方、腹足類、二枚貝類、頭足類など、グループに
よって個別に特殊化した形態があり、その形は生活様式や機能と関係している事例が多い。貝殻は
内部構造に注目すればさらにミクロな構造があり、それらに注目することにより、寿命や成長様式を
推定することができる。また、電子顕微鏡で観察される結晶の形態は分類形質としても有効である。
パワーポイント映写。。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介、恒例のバザー等で盛り上がった。
2014年12月7日（日） 文京シビックセンター
【三浦半島、忘れられた採集地を訪ねて】 石井健一郎氏
トウガタガイ類やモクメニナ等、他所では得にくい微小貝の産地であった三浦市雨崎の現状に
ついて報告。かつての採集地は浄化センターの建設により消滅したが、南に続く海岸線での打上
状況を紹介。特筆すべきはイボベッコウタマガイ生貝の打上で、東京湾側では初記録と思われる。
昔から当地で局地的な打上が知られていたオオツカテンガイも再発見することが出来た。同時に
かつてエビ刺し網で得られる貝類の名産地であった近隣の漁港の現状についても紹介。
パワーポイント映写。
【微小サクラガイ類の識別法】 河辺訓受、石井健一郎氏
同定の困難な微小サクラガイ類の区別法について解説。コメザクラ、ニクイロザクラの表面彫刻、
フォルムの相違点、シボリザクラとミクニシボリザクラのフォルムの相違点と共通して現れる斜脈
の特徴について説明。その他、ハツザクラ、ウズザクラ、ニシムラザクラ、テリザクラ等について
説明した。パワーポイント映写。
【ペリリュー島の陸産貝類】 上島励氏
ペリリュー島はパラオ諸島の南部に位置する石灰岩の島である。ペリリュー島からは過去に多く
の陸貝が報告されているが、太平洋戦争時に自然環境が大規模に破壊されたため、絶滅した種が
少なくないと推定される。2014年に調査を行ったところ、これまでの調査で未発見だった種が複数
採集された。これらの種の分類学的位置及び絶滅したと思われていた種の生存状況について論じ
た。パワーポイント映写。
【バザー・忘年会】
バザーではいつものように多数の標本の提供があった。例会終了後、会場を移し忘年会を行った。
会員同士今年の成果を報告しあうなど、大いに盛り上がった。
2014年10月19日（日） 文京シビックセンター
【式根島、利島で陸貝と遊ぶ】 石井健一郎氏
今回、初めて利島を訪島する機会を得、陸貝の観察を試みた。島内をほぼ一周し最高点の
宮塚山山頂にも足を運んだが、全島を通じて陸貝の個体数は極めて少なかった。しかし、当島
が模式産地であるトシマトヤマガイ、七島では分布の限られているハコネマイマイ等を観察する
ことが出来た。二週間後、式根島を訪問。個体数は極めて多く、ホンダギセル、ハチジョウノミギセル
は到る所に群生し、ヒロクチコギセル、シモダマイマイ、ミヤケチャイロマイマイ、カサキビなど七島
を代表する貝類も観察出来た。パワーポイント映写。
【イタリア南部世界遺産で採ったカタツムリ】 細田俊氏
2014年6月にシチリアからイタリア半島南部の世界遺産を巡るツアーに参加した。暑く乾燥した
天候の下、石灰岩地帯らしく各所で岩の木陰に張り付いたマイマイ類が見られた。また、オリーブ
の樹肌、植栽の中等からも各種の小型貝類が得られた。シチリア固有種の毛のあるカドバリコ
マイマイが採れたことと、ポンペイ遺跡内の乾いた壁にチクビギセルが多くみられたのが印象に
残った。僅か８日間の観光旅行であったが10科21種の標本を得ることができた。
パワーポイント映写。
【サザナミマクラ、ツグミノマクラ、コガラスマクラについて】 河辺訓受氏
イガイ科の表記３種について多くの図鑑や目録などで誤同定や混同のあることが判ってきた。
３種の殻形の特徴、生息深度、分布の違いを根拠に図鑑、目録類の正誤を考察し、各地標本を
回覧しながら当面の演者の取り扱い（ラベル）と今後の検討課題に言及した。資料配布。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2014年9月20日（土） 群馬県多野郡叶山周辺 陸貝観察会
会員６名が参加した。東京から直線距離は短いものの、交通の便が悪く訪れる機会を得にくい
場所だが、広大な石灰岩地帯の一角であり、陸貝観察への期待は大きかった。過去の採集報告
を参考にまず立処山南面を調査。上部露頭部ではクチマガリスナガイが散見され、関東地方では
極めて貴重な生息地の確認となった。その他周辺数か所を観察。個体数は少ないものの、30種
に及ぶ陸貝を観察することが出来た。
2014年8月24日（日） 文京シビックセンター
【カロモン氏のWamei Studies 和名研究】 知野光雄氏
カロモン・ポール氏（ANSPフィラデルフィア自然科学アカデミー）の研究テーマWamei studies
につき、古くからの和名の歴史、和名の持つ安定性や学名併用の利便性、和名を通して見た日
本後特性などの問題意識を紹介、日本の貝類愛好家、収集家へのアンケート実施の意向を説明。
資料配布
【貝を通じての様々な出会い-和歌山県の貝諸先輩-】 雑賀俊之氏
2012年に亡くなられた当会会員でもあった和歌山県の貝類研究家の小山安生氏の業績を、
地元の新聞、同好会誌の記事や、同氏と採集に出かけたエピソードをまじえて紹介。
発見時には未記載であった紀伊水道産のダイオウキヌヅツミの副模式標本、クロズギセル、
シリブトギセルなど和歌山県固有の陸貝標本を回覧。
【本年度前半の採集活動を振り返って】 河辺訓受氏
本年度前半活動として南米ペルー（ペルースカシガイ他）を手始めに周防大島
（ソメワケシロマイマイ他）、祖母山、傾山（オオイタシロギセル他）、氷ノ山（ハゲギセル他）、
平湯大滝（ヒダゴマガイ）などの成果を標本回覧しながら報告。
特筆すべきは四国貝類談話会（屋島）でのヒメエガイ、オガイの復活確認。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2014年6月15日（日） 千葉県館山市沖ノ島 観察調査会
会員６名が参加した。当日は晴天、波穏やかで10:30〜14:45（館山干潮12:07 中潮）の間、干出した
岩礁および転石帯、砂洲上の打ち上げ、タブ林内で観察調査を行った。出現した貝類は57科148種
不明2種で、そのうちハナカニモリ、ホソスジチョウジガイ、ハタエイトカケ、トゲヒメネジガイ、
イトマキレイシダマシ、シマハナシコトツブの６種は、東京湾浦賀水道（館山湾）および千葉県における
新産出記録である。
2014年4月27日（日） 港区生涯学習センター
【日本貝類学会 平成26年度大会の報告】 知野光雄氏
大阪市自然史博物館において4月12、13日に開催された日本貝類学会平成26年度大会について報告。
一般貝類採集者、収集家の視点から会員が興味を持ちそうな10の発表について解説した。今年の一般
講演は「追うヘビ逃げるカタツムリの右と左の共進性」であった。
【データベース時代の標準和名のルール作り】 丹下和仁氏
情報化時代において貝類の情報もデータベース化されて利用されている。その基幹となる学名・和名
は、データベース化の作業において最も重要である。しかし学名と違い和名には命名のルールがなく
様々な弊害が生じつつある。弊害を防止するためにも和名のルールを考える時期に来ているのでは
ないだろうか。たとえば貝類学会のホームページでの標準和名表の掲載や、新和名の提唱者は
ちりぼたんに必ず掲載するなどの方策も検討されるべきだと考える
【巻貝類（腹足類）等の色彩変異について】 知野光雄氏
ヒオウギ等の二枚貝と同様、巻貝類でも「色彩変異に富む」と図巻に記述される種は多い。
最近の海外図鑑では色変わりに１種１ページを割くものもある。代表的多色変異はヒザラガイ類、
ケボリ類、ムギガイ類、ミノムシガイ類、オトメフデ類に見られる。多いものはまさに七変化を
生じる。代表的な種名リストにより解説。種小名の versicolor、和名のイロガワリ、ナナイロも
紹介。経年、成長、老成、摂餌による変化、遺伝等の関連も触れた。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2014年2月16日（日） 文京シビックセンター
【総会】
平成25年（2013年）度活動と会計の報告、平成26年（2014年）度の運営案について役員より方針説明、
参加会員より同意を得た。
【東京貝類同好会創立、ひたちおび創刊40周年】 知野光雄氏
1967年、山本政雄氏が始めたアマチュア貝殻クラブの活動、1974年、森田登氏を初代代表として東京貝類
同好会が発足、同年、会誌ひたちおびが発行された。創刊号発行までの初期会員諸氏の熱意と努力、当時
の投稿内容、講演などを紹介、40年の歩みを辿った。 創刊号、当時の名簿、写真等回覧。
【和名を考える】 知野光雄氏
「貝の和名」や、「近海図鑑」で提起されたガイ付き和名問題、過去への回帰等について、先人の苦労を
辿った。現代感覚では難しいとされる古語や雅語、数や大きさ、深度表現等の楽しみ、歴史上の人物や神話
に基づく和名等諸例を紹介。２、３通りの名がある場合、どちらが正しい？両方正しい？等の例を挙げ問題
提起。 資料配布。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介、恒例のバザー等で盛り上がった。
2013年12月1日（日） 文京シビックセンター
【平成25年度九州貝類談話会総会に参加して】 清水利厚氏
平成25年8月9日〜11日に長崎県西海市で行われた九州貝類談話会総会・観察会に参加。砂浜海岸で
の打上採集と砂質あるいは泥質の干潟海岸で海産貝類を計64種観察。イボカサゴは東京湾産に比べてイ
ボが大きく目立つことや、千葉県に産しないオオコシダカガンガラ、ヒメアカガイ、希なシオヤガイ、ケマンガイ
などを観察。打上状況と棲息状況を写真等で紹介。
【海の中の様子】 高重博氏
長年にわたりスキューバダイビングで日本の海を潜ってきたが、これまで海中で撮影してきた膨大な生体
写真の一部を使い、貝殻からは伺い知れない貝の軟体部の模様や「顔」の表情を紹介。貝殻同様に多種多
様であり、種によっては美麗な色彩に富む様子を解説。最近の活動内容や成果、興味深い不明種などにも話
は展開した。
【ベニオキナエビス七変化】 知野光雄氏
米国ANSP所蔵の模式標本に係わる情報、本種の分布域、中心産地である長崎県、熊本県での小型底曳
船やヒラメ網につき報告。変異型として階段ピラミッド型、丸膨張型、平低型・背高型の殻高/殻幅比率、アル
ビノ、準アルビノ、火炎斑、赤色、ピンク系、橙色等の色彩変異、幼貝、オキナエビスとの中間型等を紹介。
シノニムとされるワタナベオキナエビス、オオイシオキナエビス、テラダオキナエビス等の特徴を解説。
標本閲覧、資料配布。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2013年10月20日（日） 文京シビックセンター
【四川省攀枝花のキセルガイ（Synprosphyma n. sp.）】 大久保皖司氏、石部孝氏、細田俊氏
中国四川省攀枝花市で2010年に採集した未記載のキセルガイ４種について、本会会員３名と阪神貝類
談話会会員１名による追加の生態調査を2013年9月に実施した報告。それらはSynprosphyma属の１種と
１亜種、Serriphaedusa属の１種とBathyptychia属の１亜種である。標高1200m級の石灰岩山地の湿潤な
場所に棲息していたが、前回同様にSerriphaedusa属の１種以外個体数は非常に少なかった。また、未記
載のイトカケマイマイ科Endothyrella属の１種を新たに発見した。こららの状況と旅行の概要がスライドと
標本回覧により解説された。
【四国貝類談話会（徳島大会）に参加して】 河辺訓受氏
四国４県の持ち回り開催で機関誌「まいご」が発刊されているなどの談話会の状況を説明後、今回は
三好市の山間部の湿地帯に分け入りハイイロマメシジミとウエジマメシジミを採集したことと翌日の総会、
研究発表会の主な話題を紹介。さらに大会の前後に訪れた淡路島の先山や成ケ島、徳島県那賀町の石
灰岩地帯並びに阿南市や徳島市の海岸での調査も大変勉強になったことが標本回覧などとともに報告
された。
【深海展で展示された貝類に関する情報交換】
出席者の大半が見学をしていたが、ダイオウイカはもちろん深海性イカ、タコ類の豊富な展示や予想以
上に微小であったセンスイガイ、図鑑や新聞情報ぐらいであったアルビンガイ、スケーリーフットなどを至
近距離で見学できたことなど、まだ記憶に新鮮な状態で各自の印象が語られた。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2013年8月25日（日） 港区立生涯学習センター
【北の貝の現状と最近の知見】 樋口滋雄氏
温暖化による気象や海流の変動、また漁具の改良や船のパワーアップ等による漁法の変化に伴い、
混獲物として採れる貝についてもこれまでにない新しい発見が最近見られている。いくつかの興味深い発
見を標本写真や産地情報を示して紹介。ミユキカミオボラとカミオボラ、キタノミギマキタテゴトナシボラと
ミギマキタテゴトナシボラの分類についてや、キヘイジエビスやニッポンオトヒメゴコロガイの産地にに関
わる新しい認識等々、北方海域の代表的な少産種について考察された。
また、エトロフエゾボラ、コガネエゾボラ、ズングリエゾボラ近似種、ミヤウチヒメナガバイ等、南千島太平
洋岸（北方領土）海域における最近の調査結果についても紹介。
【貝の学名をどう発音するか】 知野光雄氏
学名に用いられるラテン語には世界共通の読み方（発音）はなく、実際に貝の名前についても米国で
はアボット博士の録音レコードにあるように末尾の人名につく i をアイと発音するのに対して、他国では
イと読まれており、概ね我が国のローマ字式発音と考えて良い。そのような状況を踏まえて、標準的に
用いられている読み方（発音）について解説。
地名、人名は通常の発音を尊重、人名は本人の国でどう読むかを勘案、等の基本的な考え方を示した
上で、いくつかの名前についてその由来を説明しながら例示説明。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2013年6月16日（日） 文京シビックセンター
【単板綱の系統学的位置（決着編）】 上島励氏
原始的な軟体動物である単板綱（Monoplacophora）は深海性笠型貝殻、内臓器官の繰り返し構造を
もち、生きた化石ネオピリナで有名である。一昨年、日本から新種が発見され注目された。腹足類との
区別は体勢の捻れがないことや、腹筋痕が複数である等である。系統学上の位置は頭足類との近縁性
等も有力とされるが近年の研究論文ではゲノムデータの有効性等の検証も必要である。
【御蔵島観察調査会の報告】 塩崎晴朗氏
５月６日〜８日の日程で伊豆七島御蔵島陸産貝類調査を９名で実施。同島は東京から南へ200キロ、
船で７時間半。スダジイの巨樹、ツゲの大木、オオミズナギドリやイルカをはじめ、多数の固有種や
豊富な湧水で有名である。豊かな自然を守るため平成16年からエコツーリズムが施行され入山が
規制されている。今回、観光協会の協力により陸産貝類33種以上を記録、調査報告は「御蔵島の
科学」誌への掲載も予定されている。写真、資料、採集品を回覧し報告。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2013年4月28日（日） 文京シビックセンター
【日本貝類学会 平成25年度大会の報告】 知野光雄氏
豊橋市自然史博物館において4月20日、21日に開催された日本貝類学会平成25年度大会について報告。
採集者、収集家の視点で会員が興味を持ちそうな10の発表について解説された。
論文賞には木村妙子氏のVenus論文が、激励賞に後藤龍太郎、松田春菜両氏、
新設の学会発表最優秀賞に平野尚浩氏が選ばれた。
【貝の新種を記載する】 知野光雄氏
これまで数多くの新種記載をしてきた講演者が、自らの経験を踏まえて新種記載に必要な心構え、専門家
への相談の仕方、記載前の準備、論文の書き方、種小名や和名の付け方等について解説をされた。
国をあげて科学研究を支援する欧米と比較して、現在日本からの新種記載の少なさを懸念しており、研究者
でない会員が新種記載をするのに適切な方法についてアドバイスをされるのと併せて、新種記載の楽しさや
醍醐味等についても話をされた。
【昨夏の成果より】 河辺訓受氏
昨夏に下記のような成果があったことを標本回覧とともに報告された。
� ／軍磧∋碍糎�境に位置する飯豊山の標高1600m付近で大型の高山性マイマイ１個体を採集した。
�◆‖臘�市中網湖で稀産種キザキコミズシタダミを確認し、生息環境も判った。
また木崎湖北岸付近ではカワシンジュガイの生息も確認した。
�� 北アルプス鷲羽岳の標高2600m付近のハイマツ帯で大型のヤマナメクジの１種と思われるものを１個体
を採集した。
［バザー］ 標本多数の提供があった。
2013年2月17日（土） 文京シビックセンター
【総会】
平成24年（2012年）度活動と会計の報告、平成25年（2013年）度の運営案について役員より方針説明、
参加会員より同意を得る。B５サイズに変更された会誌ひたちおびの新企画について意見交換。
【パプアニューギニア生物多様性調査に参加して】 知野光雄氏
仏国立自然史博物館主催、正式名Papua Niugini Biodiversity Expedition
2012-2013に12月初旬
〜中旬にかけて２週間参加した。パプアニューギニア北部マダンには19カ国から総勢
120名が集結、貝類だけでなく、甲殻類、ウミシダ類、魚類、海綿類と多岐分野にわた
る研究者が参加した。採集したサンプル標本は生態写真撮影後、全てパリに持ち帰
った後に各科属ごとに約90人程の研究者に委ねられる。
拠点となった現地大学のキャンパスや宿泊した寮、食堂における生活や作業の様子、
また採集調査によって得られた標本について写真を使って解説された。
【深海性貝類へのチャレンジ】 奥谷喬司 先生
1870年代英チャレンジャー号に始まる深海における貝類の調査と発見の歴史を、当
時使用された技術や探索出来た深度において発見されたいくつかの貝を紹介しながら解説。
ソ連ヴィチヤズ号や英ガラテア号を経て蒼鷹丸の時代になると10,000mのワイヤーを使
って8,200mまで調査することが出来た。この時代にニッポンオトヒメゴコロが相模湾沖
750mで発見されている。その後有人潜水船の時代になり、しんかい2000により生きてい
るテラマチオキナエビスやシロウリガイの大集団が発見、撮影された。現在最新鋭とされ
るJAMSTECのHOVしんかい6500やROVかいこうについても紹介頂いた。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介から始まり、恒例のバザーやアミダくじ大会等で盛り上がった。
2012年12月1日（土） 文京シビックセンター
【宮古島に行ってきました】 細田俊氏
9月に本人が、10月に塩崎晴郎氏が個別に訪れた宮古島の陸貝採集について。
時間差で訪問した結果、同一場所でも時期により採集環境が一変することが分かった。前者では採集日は雨
上がりという好条件に恵まれ、野原岳においてウラキヤマタカマイマイが鈴生り状態になっているのを観察し
た。固有種についてはそれぞれ成果があり、島内各地に保存されていることが確認された。生息地の藪蚊に
敗退し微少種の成果は少なかったが、結果的に９科17種を得た。他に未記載のナメクジの写真を披露された。
【櫻井欽一博士 生誕百年】 知野光雄氏
東京貝類同好会は発足以来櫻井先生にご指導、ご支援をいただいた。会誌ひたちおびの巻頭写真解説は
創刊から65号に及ぶ。櫻井先生の鉱物・貝類関係の業績を辿り、エビスガイ七福神など先生に因む貝、銚子
や加計呂麻島安脚場等での貝類採集の工夫や論文に残る全国の協力者、櫻井標本室での例会において広
範な博識を早口で話された懐かしい想い出を披露した。
【「元素のふしぎ」展をみて】 鈴木孝政氏
上野の国立博物館にて2012年7月21日〜10月8日に開催された特別展について報告。�＼こΔ聾義任�ら
できていること、��元素の性質、�８義任糧�見史、等について解説してあったことに加えて多数の収蔵コレク
ションが展示されていた。展示コレクションの中でも最多であった旧櫻井コレクションについて一覧表を作成、
標本と併せて、今年生誕百周年を迎えた櫻井博士と本同好会との関わりやエピソードについても報告された。
［バザー］ 標本多数の提供があった。
2012年10月21日（日） 文京シビックセンター
【驚愕のハマユウ類 ‐ 日本・南西太平洋の分類・生態・系統】 芳賀拓真氏
およそ二枚貝とは思えもしないユニークな外形をもつハマユウガイ類は、貝類愛好家をはじめプロの研究者
にも古くから注目され続けてきた。 しかし、産出が稀であるため多数の種類を収集することは困難であり、分
類は混乱している。 本発表では日本産７種全種を取り上げ、これらと混同されてきた海外産の近似種について
も紹介された。 また、ハマユウガイ上科を２科に分けるべき理由や、推定されている系統関係、分類上の諸問
題についても解説された。
ハンガリーから来日中のBarna Pall‐Gergely氏を迎え、特別講演を頂く
【The family Plectopylidae（イトカケマイマイ科）に関する解説】
講演者が師事する浅見崇比呂氏と共同発表した論文について解説頂いた。
イトカケマイマイ科の貝は殻内部に特徴的な歯を持ち、ネパール・北東インドから東南アジアを経て台湾・
日本（宮古島）まで分布しているとされる。 その多くは19世紀半ばに記載されたものだが、わずかな説明と曖
昧な産地情報しかなく、また模式標本も失われている。 長い沈黙の期間の後、最近の何十年かでヨーロッパ、
アメリカ、そしてアジアの科学者により新たな分類学上の成果が発表されている。講演者らは模式標本や新た
に採集された標本をもとに、分類学上のいくつかの研究結果を発表した。
［バザー］ 標本多数の提供があった。
2012年8月26日（日） 文京シビックセンター
「世界の海産貝類分類調査研究の最先端】 知野光雄氏
仏国立自然史博物館MNHNによる海洋調査の報告。
2012年の仏領グアドゥループ（カリブ海）の調査速報では、軟体動物の大型種の報告はないが、小型微少
種1200〜1500種が確認されている。 カリブ海はソリツボ、ミジンツツガイ、ムシボタル類の宝庫で、ヒザラ
ガイ、スソキレガイ、コゴメガイ類等も豊富である。配布された参考資料には、日頃目にする機会が少ない
微少種の動物体や生態写真が多く、参加者は興味深く見入っていた。
阪神貝類同好会から大原健司氏、大谷J．ウィリアム氏を迎え、両氏から特別講演を頂く。
【琉球列島陸産貝類化石種 ２題】 大原健司氏
沖縄本島で採取されたオキナワムシオイ、カツレンマイマイ等の標本を回覧、また化石種と現生種が比
較できるようにレイアウトしたスライドを使って、大きさや形態の違いを分かりやすく説明頂く。鹿児島県
与論島から採取された陸産貝類化石の中には、現在は与論島には生息していない種類が多いが、沖縄
本島との共通種も多く、現在よりも陸産貝類相は多様であることが伺える。
【北海道３泊３日陸貝採集旅行】 大谷J．ウィリアム氏
2012年6月、友人と二人で道南部を訪ねた時の旅程や成果について標本の回覧と生息地や生態写真
についてスライドで紹介。 厚沢部町や熊石町、島牧村では、クリイロキセルガイモドキ、エゾコギセル、
サッポロコギセル、サッポロマイマイ、エゾマイマイなど、多くの北海道を代表する種と出会うことができた。
札幌市円山公園は古くから陸産貝類の生息地として知られているが、現在も良い環境が維持されている。
［バザー］ 標本多数の提供があった。
2012年6月17日（日） 文京シビックセンター
【「かたつむりの世界」採集旅行の思い出、著作出版の苦労談】 川名美佐男氏
準備構想から出版まで多数の標本、写真の整理、全国の採集地を歩いた思い出、各種にまつわるエピソー
ド等につき順次解説された。亜種、種内変異、仮称未記載種を含め各採集地毎に尽きない話題を提供された。
【四国貝類談話会 室戸岬採集会に参加して】 河辺訓受氏
四国４県が持ち回りで毎年１回開催。貝類の話題提供、研究発表会と観察調査会、採集会などの活動で
本年は６月２〜３日に高知県室戸岬周辺で開催された。報告者は過去10回以上参加してきたが、今回も坂
本海岸の荒磯でスカシエビス、ハナザラ、ヒメアワビ、ヒラヒメアワビ、ミジンチョウジガイ、クロチョウガイ
などの生態に触れ、さらに高潮線飛沫帯の堆積転石最下部からはヤマモトミジンチグサを観察するなど
貴重な体験を標本を回覧しながら話された。
【ミュージアムパーク 茨城県自然博物館 「不思議いっぱい！ 貝たちの世界
−蝸牛から烏賊・蛸まで−」展 開催の案内】 知野光雄氏、川名美佐男氏
7月7日〜9月19日まで茨城県坂東市で貝類企画展が開催される。同博物館は恐竜等の一般展示も豊かで
あり、今回は海産・陸産・淡水産貝類の代表種標本に加え頭足類の液浸標本、穿孔・寄生する貝類、食料、
文化、工芸他 貝類と人生の多くのかかわりについて総合的に展示。
［バザー］ 標本多数の提供があった。
2012年4月22日（日） 文京シビックセンター
【日本貝類学会 平成24年度大会の報告】 知野光雄氏
東京家政学院キャンパスにて4月14日に開催された日本貝類学会平成24年度大会報告の中から興味ある
10テーマにつき解説。特別展示として、東日本太平洋沖地震で大きな影響を受けた東北地方三陸・常磐沖の
貝類相の回復への期待を込めて、東北地方の貝類に関する過去・現在を標本とパネルで紹介。Fake（贋物）
の貝につき各種の作成方法を標本により解説。
【パプア・ニューギニアで見たカニノテムシロの貨幣】 須田明氏
1972年と74年にポートモレスビーのコキのLocal Marketを訪れたときに、カニノテムシロの殻口の鋏の部分が、
実際に貨幣として通用しているのを見た。ムシロガイそれ自体は貨幣としての価値はないが、螺管部を取り除い
て殻口の鋏だけにすると貨幣として流通する。このLocal Shell Money (Tab) をリーガルな流通システムに取り
込むべく政府レベルで検討が行われていた。最近インターネットで検索した結果では、上記の他にも幾つかの
地方で、形や価値の異なったLocal Shell Moneyがリーガルな通貨と一緒に流通しているようである。
【逗子海岸打上採集会速報】 河辺訓受氏
3月25日逗子海岸において参加者6名を集めて開催された。快晴の空の下ではあったが、期待に反して打上
げの状況は芳しくなく、参加者は熱心に採集したがイソマイマイ、ヤサガタムカシタモト、ドブシジミモドキ、
クシケガイ、マツヤマワスレなどが主たる成果であり、逗子海岸を代表するような種類はほとんど採ることがで
きなかった。
［バザー］ 標本多数の提供があった。
2012年2月19日（日） 文京シビックセンター 総会
【総会】
平成23年（2011年）度活動と会計の報告、平成24年（2012年）度の運営案について役員より方針説明、
参加会員より同意頂く。
【貝好き子供の人生設計】 知野光雄氏
色彩、造形美、珍しさなどの入り口から貝に出会い集め始める愛好者。プロの研究者になる人、趣味として楽
しむ人など様々である。収集は１千種、３千種と増えても切りがなく、焦点を絞りいずれは店仕舞いも考える
ことが大切。 一方、同好会・学会等の交流・交換を通じた拡がりは楽しい。自分の志向するポジションが、
フィールドの「採」、コレクションの「集」、マラコロジー「研」、コンコロジー「記」のどのあたりか、何に注力する
かも考えてみたい。
【オウムガイからアンモナイトの絶滅を考える】 松隈明彦 先生
古生代、中生代に大量に生息したアンモナイトが絶滅した理由について解説。アンモナイトに似ているとされ
るオウムガイの実際の標本を使い、その形・水中でのバランスや姿勢・重心の位置等を解説頂く。絶滅した理由
について、遊泳性で捕食があまりうまくないことで他の生物との競争に負けたもしくは稚貝が浮遊性で隕石衝突
の影響を受けたのではと推論。
【生物多様性についてタコ・イカを通して考える】 奥谷喬司 先生
現在日本近海には33,629種の生物がいることが判明しており、世界にいる約25万種の内約13.5%が、世界の総
面積のうち約0.9%しか占めていない狭い範囲に豊富に生息していることになる。内訳のうち‘我らの’軟体動物門
が最も多く約26%を占めるが、さらにその中から軟体動物門頭足綱にあたるタコ・イカをとりあげてその多様性に
ついて解説。
ミズヒキイカやダイオウイカのように巨大なもの、メンダコのように奇妙な形のもの等の形状の違いや、地域に
よって色々な言い方をされるが実は同一種であるケンサキイカ、逆にアオリイカはシロイカ、アカイカ、クワイカ
の3つに分けられること等、種の分化に関わる興味深い話をして頂く。
【懇親会】 近況報告を兼ねた自己紹介から始まり、恒例のバザーだけでなくアミダくじ大会等で盛り上がった。
2011年12月18日（日） 文京シビックセンター
[軟体動物高次分類群（綱レベル）の系統関係] 上島励氏
軟体動物の綱レベルの分類について最新の学説を紹介、各綱の特徴についても詳細な解説。分子系統学の著し
い進歩により昔は７綱だったが、今では無板類が腹溝綱（カセミミズの仲間）と尾腔綱（ケハダウミヒモの仲間）の２つ
に分けられるようになっている。また単板綱と多板綱が近いことが判っている。
[オゴクダの魅力‐潮岬オゴクダの貝類産出について] 知野光雄氏
打上貝の名産地オゴクダの特徴を南の香を掘り出す所、多くの亜熱帯産種の飛び地的分布等の北限と表現。
その人気の浮き沈み、御穀田の由来と因む和名、関係参考文献、今後の検討課題につき解説。オゴクダの代表種
50選（私案）を示した。また、現在殆ど採集できない種、最近の新種も紹介。レジメ配布。
[貝類書籍の自炊] 石井健一郎氏
貝に関する膨大な量の図鑑や書籍の保管場所に頭を痛め、電子書籍化を決意。“自炊”とは業者に依頼せず自分
で１冊づつスキャナーで取込むことを例えた言葉。本を裁断しスキャナーで読み取り〜パソコンに取込み〜iPadへ
の転送まで一連の作業作業を紹介。どれだけ効率化するかがカギ。講演者は１冊を約10分程度で読み取りできるま
でに効率化、自宅にあった約250冊の書籍を約４ヶ月程度の期間をかけて電子書籍化した。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2011年10月16日（日） 文京シビックセンター
[伊豆天城周辺陸貝調査会速報] 河辺訓受氏
台風一過9月23日〜24日に12名が参加して開催された観察調査会の報告。 浄蓮の滝、天城峠、河津七滝、湯ヶ野
にて調査・探索、注目種のメルレンドルフマイマイ、トラマイマイ、ミヤマヒダリマキマイマイ、オオトノサマギセル、
ハコネマイマイ等をはじめ40を超える種類を確認することができた。
特に天城峠ではゴマガイの仲間を狭い範囲で５種類も発見することができたが、このような場所は国内では例がないと
思われる。
陸貝にとって理想的な環境が残る伊豆半島のすばらしい自然についても言及があった。
[ボルネオ島サラワク州のノタウチガイ] 細田俊氏
陸貝仲間４名でマレーシアのボルネオ島に7月20日〜28日の日程で訪問。
グヌン・ムル国立公園、ニア国立公園、クチン周辺、セリアン周辺、バウ周辺と場所を変えながら探索した結果、目当てで
あったノタウチガイの仲間を十数種発見できた。
口を上にしてぶらさがった状態で発見されるノタウチガイの様子や、奇麗なアオミカタニシの仲間を始めとするその他陸貝
の生態をスライドを使いながら説明。 海外での探索につきものの苦労話や現地の人々との関わり等、今回も楽しい話
が多かった。
[世界自然遺産に登録された小笠原諸島の貝類] 河辺訓受氏
海洋島としての独自の生態系をもつ小笠原は貝愛好家にとって憧れの場所であるが、その交通手段の不便さ故行きたく
てもなかなか行けない場所でもある。 小笠原を象徴する貝として、名前にオガサワラがついたものを主体に小笠原特
産種や注目種等を自身が2006年に訪島して探索した経験を交えて紹介。 本土と異なり特異の形態を持つ種類が多く
標本を回覧しながら解説された。
【バザー】 標本多数の提供があった。
2011年8月28日（日） 文京シビックセンター
[イセノナミマイマイ] 須田明氏
イセノナミマイマイは東海地方西部から伊勢湾沿岸域を経て近畿地方南部に至る広範な地域に分布しているが、殻皮の色が地域によって変化し、分布域の南西部に当たる地方では、多かれ少なかれ赤褐色味を帯びていることを紹介。 また本亜種と近縁種であるヒラマイマイ種群について種の分布状況やバイオマスの大きさについて比較説明された。
[シズクニナ属の分類（美しい微小貝の魅力）] 知野光雄氏
本属は従来日本近海からは４〜５種のみが知られ多くは打上標本であったが、2009年に演者はフィリピンと日本から18新種を記載した。論文pdfに沿って、問題意識や検討のプロセス、命名上の工夫、その後の発見等のエピソードを紹介。併せて微小貝調査の魅力についても解説。標本回覧と併せて５新種を含む９種の標本セットが参加者にプレゼントされた。
[クダマキガイ科の新分類体系について（短報）] 知野光雄氏
イモガイ上科の新分類体系に関する２論文が７月に発表された。フランスのブシェ博士ら現代の第一線研究者が貝殻、歯舌、分子系統の各方面から検討し、イモガイ科、タケノコガイ科を除くクダマキガイ科を12科（フタナシシャジク科、コトツブ科、フデシャジク科、ツノクダマキ科等）に分類した。論文pdfの図版により各科の代表種を紹介。
[貝化石から改めて学ぶ] 丹治豊明氏
石を改めて見直しをしていく中で思いついた幾つかの疑問、問題点について講演。その中から、エゾバイ科のミクリガイ・セコボラ・トウイトガイの区別の難しさ（化石故に色が無い・螺肋や結節が削れているから）と、図鑑やインターネット上（公的機関）にあるいくつかの分類の誤りについて指摘、紹介された。
［バザー］ 標本多数の提供があった。
2011年6月19日（日） 文京シビックセンター
[与那国島への陸貝採集旅行] 細田俊氏
目的のひとつであったヨナクニゴマガイ、ウオズミゴマガイ、ヨナクニマイマイをはじめ、ツヤノミギセル、ヤエヤマノミギセル、ヨナクニカタヤマガイ、ヨナクニアツブタガイ、ケハダヤマトガイ、ヤエヤマキサゴ、ホソオカチョウジガイ等を発見。
探索場所の紹介をはじめ、ヨナクニサン等の島の風物や名物のカジキマグロ料理、夜の宴会の様子等についての楽しい話もあった。
[続 パラオの陸貝について] 上島励氏
パラオは海洋島で独自の進化をとげた生物が多いが陸貝についても、�仝罵�種が多く��1cm以下の小型のものがほとんど��少量の科と属で構成�っ�しい種分化、という特徴がある。その中でもゴマガイの仲間には美麗で見事なヒレをもつ種類が多く、多様化している。過去数回にわたる調査の様子やそれにより分かったカサマイマイやエンザガイ、ゴマガイ等々の分布状況や生息環境について紹介。
[短報 中国の陸貝] 大久保 皖司氏
クビネジレギセルの採集を目的に2002年に初めて訪問したのを皮切りに、既に20回以上訪問している中国及び台湾での探索について、これまで訪問した場所や旅程を地図で指し示して報告。お気に入りのキセルガイ科の著書や種分化についての説明もあった。さらに参加者全員に特徴的なキセルガイ標本のプレゼントがあり、参加者は大喜びしていた。
[バザー] 標本多数の提供があった。
2011年4月29日（金） 港区立生涯学習センター
[日本貝類学会平成23年度大会の報告] 知野光雄氏
4月16日、17日九州大学総合博にて開催された大会より、一般貝類愛好家、収集家の視点から興味深い内容を選び紹介。
[同好会ホームページの開設について] 増子博英氏
インターネットを使った同好会の紹介と入会希望者への案内を目的にホームページの開設を起案、試作品の説明を実施。
例会に参加頂いた会員より公開についての同意を頂く。
（会員の皆様のご意見を頂きながら今後も継続的に更新・改善・修正をしていければと考えております。）
[仏国立自然史博物館（MNHN）の貝類採集・記載活動について] 知野光雄氏
発表者が古くから縁があるMNHNへ訪問、自身が撮影された写真をスライドで紹介しながら説明。MNHNが誇る世界屈指（タイプ標本数が世界3〜4位）の標本・蔵書・施設について、またそれらを死蔵させずいかにして有効活用していくかを常に考え活動しているMulluca Teamの構成人員とそれを支えるボランティアの活動方針等を紹介。
[パリ シェルショウについて] 知野光雄氏
3月5〜6日に開催されたパリ・シェルショウへ参加した様子を自身が撮影された写真をスライドで紹介しながら説明。主催は仏貝類協会で開催場所はルーブル博物館の横にある歴史を感じさせる豪華なパリ商品取引所。世界各国の標本販売業者だけでなくアマチュアもテーブル出品。会場の様子、出品された貝の多様性、愛好家垂涎の美麗種や稀産種、参加者の様子を始め、日本の貝に対する各国の参加者の評価について等興味深い話はつきず。
[バザー] 標本多数の提供があった。
2011年2月20日 若宮オリーブ館
[総会]
平成22年（2010年）度活動報告、会計報告、役員からの報告。
運営組織について決定、新会長として知野光雄氏が就任した。
[化学合成生物群集（シンカイヒバリガイ属Bathymodiolus）及び鯨骨群集について] 奥谷喬司 先生
化学合成生物群集としてシンカイヒバリガイ属から6種、ならびに鯨骨群集の4種についてそれぞれの特徴、分類、産地及び学名の由来等を判りやすく紹介頂く。
ちなみに’Bathy‐modilus’とは’深いところの‐ヒバリガイ’という意味。化学合成生物群集については体中に共生細菌を有しメタンや硫黄をエネルギー元として生活している。
[韓国の貝類相について] 山下博由氏
韓国の海岸線の調査結果を報告。チェジュ（済州）島は日本の対馬や山口に近いが、西側は黄海に近い貝類相であることや、日本ではあまり見られなくなったヤベカワモチ、ハイガイ、スミノエガキ、オキシジミ等を採る漁業がまだ盛んな様子、チョウセンボラ、チョウセントクサ、ヒナギヌ、ダビデノツバサ等の固有種について、広大な干潟の干拓事業が進行中のセマングム（新萬金）において失われていく自然や環境保全運動の様子等々を紹介。
[貝類のなぜだろう。なぜかしら] 知野光雄氏
貝についての疑問・質問を佐々木猛智著「貝の不思議」（東大出版会）及び学会報告から引用して紹介。また、�．┘哨劵織船�ビの特異な個体は病気か、環境によるものか？��二枚貝は厳密には左右対称ではないとの問題意識から、腹縁部の噛合せや肋が生じる凹凸、また二枚貝の簡便な前と後、腹と背の見分け方について解説。
[バザー] 標本多数の提供があった。
2010年12月19日 若宮オリーブ館
[三番瀬と江戸川放水路の楽しい二枚貝] 桂田肇氏
自宅近くの江戸川放水路と三番瀬で採集した貝よりオオノガイ、サビシラトリ、バカガイ（奇形）、ホンビノス（奇形）について写真を使って紹介、また鋤簾を使って採集したことやオオノガイの水管を標本にするのに苦労した話等を紹介。
[なぎさで拾う深場の貝] 石井健一郎氏
人工の砂浜である山口県山陽小野田市にあるきららビーチ焼野の砂を調査したところ、コシダカシタダミ、トウガタナワボラ、ナガトゲコウシツブ、ワタゾココトツブ、ワタゾコエガイ、ヒシオトヒメゴコロ、ウズマキゴコロ等通常は砂浜に打ち上がらない貝が発見できた。話はこの地の砂がどのあたりから持ち込まれたか発表者以外も含めた意見交換に発展。八丈島や奄美古仁屋のサンドポンプであげられた貝についても紹介。
[10月度観察調査会報告] 河辺訓受氏・鈴木孝政氏
[バザー] 標本多数の提供があった。
2010年10月17日 若宮オリーブ館
[チュニジアの風物と貝] 細田俊氏
約1週間の日程でチュニス〜スース〜エルジェム〜ザグアン等を訪問。奥様を同伴した観光旅行のわずかな合間に発見できたチュニジアの陸貝を現地風景や風物と併せながらスライドで紹介。
[岩手県猊鼻渓の陸貝] 河辺訓受氏
石灰岩の露頭までは行き着けなかったが高密度のヒタチマイマイやキセルモドキの集団に遭遇。他にヤマキサゴ、ゴマガイ、ヒダリマキゴマガイ、ミジンヤマタニシ、ニホンケシガイ、スジケシガイ、ヒメベッコウ、オオタキキビ、キビガイ、ウラジロベッコウ、ニッポンマイマイ、オオウケマイマイ、アオモリマイマイ、ヒダリマキマイマイ、ムツヒダリマキマイマイを確認した。
[東京湾奥の貝況] 西村和久氏
東京羽田空港周辺海域にて採取される貝類について、月別に集計された種類や個体数やその棲息状況を考察。夏場青潮の発生〜酸欠による大量死等の問題やそれでもたくましく生きる貝の様子を写真を使って紹介。
[バザー] 標本多数の提供があった。
≪盤洲干潟・海の観察会≫ 2010年9月26日
調査報告は会誌ひたちおびに記載
≪丹沢大山・陸貝観察調査会≫ 2010年9月25日
調査報告は会誌ひたちおびに記載
2010年6月20日 若宮オリーブ館
[貝愛好家の為のiPad利用法] 増子 博英氏
2010年5月28日に発売されたApple社のiPadについて、貝愛好家の視点で便利な使用方法を説明。電子メールやWebサイトの閲覧だけでなく持ち運び不便な大量の図鑑を電書籍として取り込んだり、生態写真の管理等を実演。
[ミャンマー漫遊記] 大久保 皖司氏
2009年10月13日から9日間、初めてのミャンマー訪問。情報が乏しい中とにかく石灰岩地帯、洞穴を目指し、PhaAn, Moulmein,
PyinULwin, PadahLin, Kalaw, Pindaya を車と飛行機で探索。Oospira(O) philippiana, gouldiana, Ganesella capitum, c.hariola 他２新属を含め17科43属110種を採集。資料不足で殆んどがsp.のままで、今後の研究が待たれる。
[バザー] 標本多数の提供があった。